“集合住宅で遊んでいたらバケツの水が…”「子どもの声は騒音ではない」お手本ドイツの意外な実情

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「子どもの騒音問題」ドイツと日本の違い

 ドイツと日本で決定的に違うのは、ドイツは昔のほうが子どもの騒音にまつわる苦情が多く、訴訟が多かったことです。保育園が閉鎖に追い込まれたことが、子どもの騒音を騒音とみなさない2011年の「連邦イミシオン 防止法」につながりました。

 日本の場合は状況が違います。昭和の時代、日本では「子どもの騒音」にまつわる苦情はほとんどなかったといいます。ところが近年は子どもの騒音にまつわる苦情がいっきに増えました。

 日本で、ドイツのような子どもの声を騒音とみなさない「法律」を作っても、日本とドイツでは文化が違うのだから、意味がないのではないか―――。そんな声も聞こえてきます。

 でも「両国とも法律を守るタイプの人が多い」というのが筆者の印象です。ですから「法律を作って子どもの騒音を騒音ではないとするのは日本の国民性にそぐわない」などと言わず、思い切って「子どもの声を騒音としない法律」を作れば、少しずつではあるけれど、人々のマインドも変わってくるのではないかと思っています。

「子どもの騒音トラブル」とともに「キレる高齢者」が話題になっている今、「広い心で子どもを見守ること」を努力義務にせず、法律という形で白黒ハッキリ示したほうが効果的だと考えます。そうすることで、子どもに対して「子どもは子どものままでいいんだよ。たまには大きな声を出してもいいんだよ」と守ってあげることができますし、大人に対して「子どもはうるさいものだから、大人は我慢すべし」という考えを浸透させることができると思います。

「子どもの騒音」のことを考える時、「きれいごと」では済まされないと気づかされました。

 先日、筆者は都内で多くの用事を片付けなければならない日がありました。時間が迫るなか、朝から分刻みで色んな用事を済ませ、ストレスを感じていました。ようやく全ての用事を終え、夕方、あるレストランに入りました。座り心地の良いソファー席に腰かけ、料理を頼み、スープを飲んで「ああ、ホッとした……」と思ったその瞬間に店のどこからか大きなボリュームで「幼児のぐずる声」が。その甲高い声を聞いて一瞬「よりによってこんなストレスフルな一日の終わりに勘弁してほしい」という考えが頭を過ったのは事実です。そうはいっても、自分もきっと昔はぐずっていたんだろな、うるさかったんだろうな…その年齢だと仕方ないよな、と諦めてスープを啜りました。

【参考】
https://www.kostenlose-urteile.de/smart.newssearch.htm
https://www.kostenlose-urteile.de/smart.newssearch.htm 

サンドラ・ヘフェリン
ドイツ・ミュンヘン出身。日本歴25年。日本語とドイツ語の両方が母国語。自身が日独ハーフであることから、「多文化共生」をテーマに執筆活動をしている。著書に「体育会系 日本を蝕む病」(光文社新書)、「なぜ外国人女性は前髪を作らないのか」(中央公論新社)、「ほんとうの多様性についての話をしよう」(旬報社)など。7月15日に新著「ドイツの女性はヒールを履かない 無理しない、ストレスから自由になる生き方」(自由国民社)が発売予定。

デイリー新潮編集部

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