秀吉ゆかりの“黄金の茶釜”が3億円で落札された裏事情 落札者は「海外に流出しなくてよかった」

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「ビックリしました」

 どちらにしても、高虎の死後、藤堂家の子孫は現在の三重県津市一帯を治めた「津藩」の藩主を代々務め、茶釜は大切に守られてきた。

 地元・三重県を中心に活動する「津城復元の会」の西田久光会長が言う。

「地元では誰も実物を見たことがなく、こんな貴重な財産が藤堂家に眠っていたんやとビックリしましたね。聞いたところでは、最近まで銀行の貸金庫に預けてあったらしい。やはり個人でこれだけの品を保存していくシステムが日本では確立されていないので、守っていくのは難しい。少なくとも、現在のご当主は、お金目的でどこにでも売ってしまう方ではありませんよ」

 藤堂家の直系を継ぐ現当主は15代目にあたり、現在は都内に在住している。

現当主は故郷にわだかまり

「明治以降、藤堂家の当主は代々伯爵の地位におさまって戦後を迎えました」

 そう話すのは、藤堂家の事情を知る関係者だ。

「戦後も津城周辺の土地や石垣を所有していましたが、現当主が子供の頃、親族が勝手に土地を県へ寄付したそうなんです。現当主は三重県を相手に所有権の確認を求める裁判を起こしましたが、県が管理使用してから20年以上たっていたという時効の壁もあって、6年前に敗訴しています」

 現当主は故郷にわだかまりを抱えていたそうだが、近年は高虎ゆかりの全国5市町が参加する「高虎サミット」といった催しにも出席するなど、地元との交流を再開していたという。

 さる市政関係者に聞くと、

「当時の津市長が東京の藤堂邸にあいさつに出向き、今では三重にも時折、当主の方が来てくださるのですが、やはり相続や跡継ぎでご苦労があるとこぼされていた。今回の茶釜も、地元の美術館などで保存していければよかったのですが……」

“令和の殿様”も相続問題には抗えなかったのかもしれないが、晴れて帰郷する日はやってくるのだろうか。

週刊新潮 2023年6月8日号掲載

ワイド特集「裁定、算定、鑑定やいかに!?」より

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