リブゴルフがPGAツアーとの統合に合意も“消滅の危機?” ノーマンCEOに悲劇の予感

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モナハン会長の気になる発言

 今週のPGAツアーの大会、RBCカナディアン・オープンの開幕前、試合会場では緊急の選手ミーティングが開かれ、モナハン会長も出席した。選手からは怒声とも言える声が矢継ぎ早に上がり、モナハン会長を詰問した。

 それもそのはず、選手たちはモナハン会長とPGAツアーに忠誠を誓い、リブゴルフから高額の移籍料をオファーされても誘惑を断ち切り、PGAツアーに留まってきた。彼らにとっては手のひらを返したような今回の統合合意は「理解しがたいもの」であり、モナハン会長を「裏切り者」と呼びたくなるのも頷ける。

 モナハン会長自身、「人々は私を偽善者と呼ぶだろう。批判は甘んじて受ける」と覚悟さえしている様子である。

 選手からモナハン会長へ、こんな質問が飛んだ。

「リブゴルフはこれからも、これまで通りに存続するのですか?」

 モナハン会長の返答はこうだった。

「そのシナリオは無い。ノー!」

 まだ統合合意に達したばかりで、新たな一大組織の名称すら決まっていないこの段階で、モナハン会長がここまではっきり「無い」「ノー」と言い切ったことで、「リブゴルフは消滅する」という説が瞬く間に広がった。

ノーマンが悲劇の主人公に?

 6月8日、交渉役を務めたPGAツアーの理事の1人、ジミー・ダン氏が内幕の一部を明かし、米スポーツイラストレイテッドによって報じられた。

 ダン氏はPIFに「PGAツアーの名はPGAツアーのまま残る」「リブゴルフを統括指揮する権限をモナハン会長が持つ」といった条件を提示。

 新組織は構造的にはPIFのルマイヤン会長を頂点として、その下にモナハン会長とDPワールドツアーのキース・ペリー会長が入り、PIF傘下に位置付けられていたリブゴルフとノーマンCEOの今後はモナハン会長に委ねられる形になったそうだ。

 ダン氏によれば、「ルマイヤン会長とPIFはゴルフの主要な部分にいたい、なりたいと願っており、リブゴルフはそのための手段の1つにすぎない」と考えているのだそうだ。そして、モナハン会長は「リブゴルフを解散させることもできる。その場合はリブゴルフ選手をPGAツアーに復帰させる手立てを講じる」ことも条件の中にあるという。

 もしそうなったら、この統合による一番の悲劇の主人公はノーマンということになる。

 現役時代のノーマンは、メジャー大会の最終日を首位で迎えながら崩れて勝利を逃すこともたびたびあり、ワールドツアー構想やプレジデンツカップ、世界選手権シリーズの発案者でありながら、結局ただの一度もスポットライトを浴びる立場にはなれなかった。

 そんなノーマンが「またしても悲劇の主人公になってしまうのか?」、そんな嘆きの声が米ゴルフ界に広がっている。

舩越園子(ふなこし・そのこ)
ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学客員教授。東京都出身。早稲田大学政治経済学部経済学科卒。1993年に渡米し、在米ゴルフジャーナリストとして25年間、現地で取材を続けてきた。2019年から拠点を日本へ移し、執筆活動のほか、講演やTV・ラジオにも活躍の場を広げている。『王者たちの素顔』(実業之日本社)、『ゴルフの森』(楓書店)、『才能は有限努力は無限 松山英樹の朴訥力』(東邦出版)など著書訳書多数。1995年以来のタイガー・ウッズ取材の集大成となる最新刊『TIGER WORDS タイガー・ウッズ 復活の言霊』(徳間書店)が好評発売中。

デイリー新潮編集部

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