栗山監督はなぜ若手に慕われる指導者になれた? 二人の側近が驚嘆した「信じる力」に迫る
予知能力としか言えない決断
甲斐三振でも二死から3ランが飛び出した。それを栗山は予見していたのか?
「すぐ2点を取られてリードを許した8回裏、1死二、三塁でまた甲斐に打順が回ったのです。前の回に代打を送っていたら、もう捕手がいませんから代打は使えません。ここで栗山監督は山川穂高を代打に送り、その山川のレフト犠牲フライで1点差に追い上げるのです。その展開が栗山監督には見えていたのか? 不思議でなりません」
栗山の予知能力としか言いようのない決断に城石は時々遭遇してきたという。
「自分みたいな凡人にはわからないところです。よく『野球の神様』って栗山監督は言うじゃないですか。本当に野球の神様に愛されている。愛されるために、毎日、徳を積んでいる。栗山さんはいまも自宅のある北海道の栗の樹ファームにアオダモの苗木を植え続けています。アオダモが育ってバットになるには50年かかる。それでも植える。そうやって野球の未来に尽くしているからかなあと」
ノックを「生きた打球」にする技術
人知れぬ努力という意味では城石も同じだ。現役時代の財産だけで指導するコーチも多い中、城石は切磋琢磨を続けてきた。
守備の達人・源田が、城石のノックを受けて、
「これほど生きた打球を打ってもらったのは初めて」と驚き、感謝を口にした。
「ノックの打球は、気を抜くとスライス気味になる。通常の打球とは違う回転になりがちなので、そこはかなり努力して、実際の試合と同じ打球を打てるようにしました」
謙遜しながら、城石は認めた。栗山監督は、自らも監督としての修練を重ねると同時に、共に闘うコーチングスタッフにも努力を怠らない人材を選んだ。それは、WBCで投手をサポートするブルペン担当コーチを務めた厚澤和幸(50)=現オリックス投手コーチ=にも通じる。
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