【京都タリウム殺人】被告の“妻”が初めて明かす胸中 娘想いの“夫”はなぜ叔母が倒れてから変わってしまったのか

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「料理なら一流を10万円で味わえる」

「その頃は夫婦関係も良好で、家事や育児を手伝ってくれることも多かったんです。主人と叔母との関係も良くて、一緒にジムにスイミングなどにも出かけていました」

 一希被告の“金回り”が良くなった理由は全く知らなかったが、「叔母様の会社を受け継いでから、主人の外食の頻度が激しくなったことは事実です」とA子さんは振り返る。高級レストランで頻繁に外食を繰り返し、祇園のビジネス仲間との交流が深まるにつれ、一希被告は“一流”について語るようになった。

 妻と幼い娘が家で待つなか、ときに飛行機も使い、美食を探求していた一希被告。なぜそんなに高級外食にこだわっていたのか。A子さんに聞くと、こう振り返った。

「その当時、一希は“料理なら一流を10万円で味わえるんだ”とよく言っていました。一流とされる時計や車を手に入れるには1000万円が必要だけど、料理の世界だったら、最大10万ぐらい出せば超一流のものが体験できる、と。私もなるほどと納得していて、外食での散財にはあまり口を出さなかったんです」

高級料理店に連れてくるようになった“若い女性”

 叔母が倒れた後、明らかに金回りが良くなった一希被告は、常連として通っていた高級料理店に若い女性を連れてくるようになった。それが2022年10月に命を落とす浜野日菜子さんだった。

 祇園の仲間と、夜な夜な高級店での食事に繰り出すようになっても、外食のため1人で北海道などの遠方に出かけてしまうようになっても、「まだ私との会話はあったし、娘の面倒も見てくれていました。お風呂上がりに遊んであげたり、休みの日は一緒に出かけてくれたり……」と振り返るA子さん。

 では、浜野さんの存在をいつ知ったのか。そう尋ねると、深刻な表情のまま一呼吸置いて、答えた。

「苦渋の決断で高額の探偵を雇って調べてもらいました。そこで浮上したのが、若い女性との“不倫”疑惑でした」

 娘想いの“夫”は、叔母が倒れたことをきっかけに変貌を遂げ、ついに殺人事件で逮捕される。一希被告と亡くなった女子大生との間に何があったのか、そして、なぜ事件は起きてしまったのか。

後編に続く)

高橋ユキ(たかはし・ゆき)
ノンフィクションライター。福岡県出身。2006年『霞っ子クラブ 娘たちの裁判傍聴記』でデビュー。裁判傍聴を中心に事件記事を執筆。著書に『木嶋佳苗 危険な愛の奥義』『木嶋佳苗劇場』(共著)、『つけびの村 噂が5人を殺したのか?』、『逃げるが勝ち 脱走犯たちの告白』など。

デイリー新潮編集部

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