強欲インフレに不動産バブル崩壊の危機…危なすぎる欧州政治の行き着く先

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欧州のガス価格はなぜ急落したのか

 欧州連合(EU)統計局が6月1日に発表した5月のユーロ圏の消費者物価指数(HCPI)は、前年比6.1%上昇と4月の7%から鈍化した。

 高インフレは依然続いているものの、エネルギー価格は1.7%下落した。

 ロシアのウクライナ侵攻で高騰していた天然ガスの価格が、侵攻前の水準に戻ったことが反映された形だ。欧州の天然ガス指標のオランダTTFの翌月渡し物価格は1メガワット時当たり30ユーロを下回り、昨年8月に比べ9割超も安くなった。

 記録的な暖冬のおかげでガス不足が生じなかったことに加え、景気後退による需要の縮小が欧州のガス価格の急落をもたらした。

 5月25日の複数の報道によると、欧州委員会はEUの天然ガス需要が今後1年間で減少し、減少幅はEUが今年ロシアから輸入する見込みのガスの総量を上回るとの見通しを示している。域内のガス需要縮小の主な要因はドイツ経済の低迷だ。

 欧州経済の雄であるドイツの今年第1四半期の国内総生産(GDP)はマイナス成長となり、リセッション(景気後退)入りが確認された。昨年のエネルギー価格の高騰で消費が落ち込んだことが災いした。

 エネルギー高が欧州市民の生活に大打撃を与えたこともわかってきている。

 英誌『エコノミスト』(5月13日号)は「昨冬の欧州ではエネルギー価格高騰による死者数が新型コロナ感染による死者数を上回った」と報じた。

 同誌が各国の統計を分析した結果によれば、昨年11月から今年2月までの期間に欧州28カ国での新型コロナによる死者数は5万9700人だったのに対し、暖房が使えなかったことなどによる死者数は6万8000人に達した。

 欧州は記録的な暖冬だったが、それでもこれほど多くの犠牲者が生まれていたのだ。

エネルギー高の次は食料インフレに見舞われる欧州

 欧州はエネルギー高という「悪夢」からようやく解放されたわけだが、「一難去ってまた一難」。今度は食料インフレの嵐に見舞われている。5月のユーロ圏の食品価格などの伸び率が12.5%と10カ月連続で2桁を記録した。

 英国はさらにひどい状況だ。5月のCPIは前年比10.1%上昇したが、その元凶は食料品価格の高騰だった。食品・非アルコール飲料の価格が19.2%増と、約45年ぶりの高水準となっている。

 ロシアのウクライナ侵攻後、世界の穀物価格も急騰したが、足元の状況はエネルギー価格と同様、落ち着きを取り戻している。

 指標となる米シカゴ市場の小麦の先物価格は、5月末に1ブッシェル6ドルの節目を下回り、2020年12月以来の安値を付けた。世界最大の小麦輸出国であるロシアの豊作が予想され、需給緩和の観測が強まっている。同市場のトウモロコシ価格も、米国での記録的な豊作の見通しを受けて急落している(5月16日・31日付日本経済新聞)。

 このように、穀物の国際相場が軒並み急落しているにもかかわらず、なぜ食品価格の伸びは鈍化しないのだろうか。

 欧州では「強欲インフレ」論争が巻き起こっている(5月29日付日本経済新聞)。

 強欲インフレとは、資源や穀物などの市況に関係なく、企業がインフレを口実に利益を求めて追随値上げに走る行為のことを指している。

 槍玉に挙がっている食品企業は「エネルギー高が続く状況下で価格転嫁が十分に出来なかったため、失った利ざやを補うために価格を引き上げている」として適正な価格見直しだと主張しているが、「便乗値上げ」の可能性もある。

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