ウクライナ軍の反攻開始でロシア軍は総崩れ 専門家が「まさに敗北寸前の軍隊」という状況証拠とは
深刻な戦車不足
「ロシアの軍需産業にとっては、ミャンマー、スーダン、インドといった国が“お得意さま”です。そうしたお得意さまから戦車の補修部品などを逆輸入していると日経が報じたのです。『不良品を買い戻した』というのが一応の口実ですが、輸入時に検品しているはずですから理屈が合いません。実際のところは、老朽化した戦車の部品を新型戦車の部品と交換し、少しでも性能をアップさせようとロシア軍は必死なのでしょう」(同・軍事ジャーナリスト)
浮き彫りになるのは、ロシア軍の深刻な戦車不足だ。オランダの軍事サイトORYXは、SNSなどに投稿された最前線の写真などからロシア軍の被害をカウントしている。
公式サイトによると6月7日現在、ロシア軍の戦車は2011両が破壊。110両が損害を受け、111両が放棄、544両が鹵獲(ろかく)されたことが分かったという。
「ORYXは5月の段階で、ロシア軍の戦車は多ければ3000両が破壊されたか鹵獲された可能性があると分析していました。開戦当初、ロシア軍は実戦で使用可能なT-72やT-90といった戦車、約2500両を保有していました。その大半がウクライナ軍の攻撃で被害を受けたと考えられており、ロシア軍は骨董品とも言うべき古いタイプの戦車を前線に送っています。1962年に量産が決まったT-62を倉庫から引っ張り出し、1958年に登場したT-55も極東の戦車保管庫から鉄道でウクライナ方面に輸送しました」(同・軍事ジャーナリスト)
クーデターの可能性
古い戦車では戦力にならない。そのためT-72やT-90の部品をミャンマー、スーダン、インドといった国々からかき集め、T-62やT-55に無理矢理装着するつもりなのだ。
「要するにロシアは制裁などの影響で、新しい戦車を生産することができないのでしょう。これは有り体に言って、敗戦寸前の軍隊だとしか考えられません。日本も太平洋戦争の末期には、工業生産能力が著しく低下しました。ロシア兵が脱走しているとの報道がありましたが、ウクライナ軍の猛攻によってロシア軍が物理的に被害を受けただけでなく、内部から崩壊する可能性も浮かび上がってきたのではないでしょうか」(同・軍事ジャーナリスト)
実際、ロシア国内でクーデターが起きる可能性も取り沙汰されている。デイリー新潮は5月10日、「弾薬持ってこいや! ワグネル創設者とプーチンの“本当の関係” 専門家は『プリゴジンの本音はウクライナ侵攻どころではない』」の記事を配信した。
記事の中でロシア政治が専門の中村逸郎・筑波大学名誉教授は、ロシアでクーデターが起きるかどうかの鍵は民間軍事組織ワグネルの創設者であるプリゴジン氏と反体制派のアレクセイ・ナワリヌイ氏(47)が握っていると指摘した。
《「ナワリヌイ氏は2021年に帰国して身柄を拘束され、刑務所に収監されています。ここで重要なのは、プリゴジン氏は囚人兵のリクルートを行うためにロシア全土の刑務所を自由に出入りしていたことです。様々なパイプを持つプリゴジン氏が動けば、ナワリヌイ氏と獄中で極秘に面談することも可能でしょう。ワグネルという軍事組織を持つプリゴジン氏と反プーチンのシンボルであるナワリヌイ氏が手を組み、ウクライナ停戦を掲げてクーデターを起こせば、国民が熱狂的に支持する可能性も否定できません。プリゴジン氏がプーチン大統領を裏切るのか、最後まで忠臣として仕えるのか、大きなポイントだと思います」》
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