韓国に比べてかなり低い「日本の若者」の留学意識 オペラの世界で実感することは?

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若者が内向きで国力が低下する

 各企業が新入社員を受け入れた今年4月3日の月曜日、テレビのニュース番組で大卒の新人たちの発言を聞いて驚いた。ほとんどの若者が、最初から仕事とプライベートの比率を五分五分にたもちたいと答えたのである。ワーク・ライフ・バランスが尊重されることに異議はない。しかし、それは仕事を覚えてからの話だろう。若いときに知見を広げ、自分を磨き、十分なスキルを身につけてこそ、ワーク・ライフ・バランスは実現できる。

 ところが、今日の日本の若者は、仕事を覚えたり自分を磨いたりする前に、プライベートの充実を志向するようだ。しかし、未知の仕事にはじめて取り組む局面でさえ「仕事とプレイベートは半々」といっているようでは、将来、必要とされる人材となる可能性は低くなるといわざるをえない。結果的に、自分でワーク・ライフ・バランスをコントロールすることは難しくなるだろう。

 仕事に対するこうした消極的な姿勢が、留学を望まないという意識と重なることはいうまでもあるまい。

 このような若者の内向きの意識、守りの姿勢が、ひいては日本の国力の著しい低下につながると、ここに断言しておきたい。たとえばノーベル賞の授賞者なども、ある時期から、韓国からは出ても日本からはまるで出ない、ということになるに違いない。

顔を見せることさえ恐れる若者

 さすがに、政府も重い腰を上げはじめた。岸田文雄総理は3月17日に開かれた政府の教育未来創造会議で、日本人の留学生を2033年までに50万人にするという方針を明らかにした。しかし、いまだその方策は明らかにされていないものの、若者の意識を10年で大きく変えるのは、きわめて困難ではないかと想像する。

 情報サービス会社のビッグローブが3月下旬に調査したところ、「マスクを外すタイミングについて」、18歳~29歳の若年層の33.5%が「感染が収束しても外したくない」と答えている。しかも、30歳~60代の30.3%を上回っていた。また、若年層は「マスクに関してストレスを感じること」として、男性の48.0%、女性の66.7%が「素顔を出すこと」を挙げていた。

 相手に顔を見せるというコミュニケーションの基本中の基本を恐れる若者。彼らの意識を変革するのは、並大抵の難しさではないと思うが、それができないかぎり留学生は増えないだろう。それどころか、国際社会における日本のプレゼンスが高まることもないのではないだろうか。

香原斗志(かはら・とし)
音楽評論家。神奈川県出身。早稲田大学教育学部社会科地理歴史専修卒業。著書に『カラー版 東京で見つける江戸』『教養としての日本の城』(ともに平凡社新書)。音楽、美術、建築などヨーロッパ文化にも精通し、オペラを中心としたクラシック音楽の評論活動も行っている。関連する著書に『イタリア・オペラを疑え!』(アルテスパブリッシング)など。

デイリー新潮編集部

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