とにかく明るい安村 イギリスで“全裸ポーズ芸”はなぜ大ウケしたのか

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真に評価された“ネタと見せ方のクリエイティビティ”

 このネタ動画が多くの日本人を感動させるのは、その笑いの構造が外国人の観客にきちんと伝わった上で笑いが起こった、ということがはっきりとわかるからだ。意図を誤解したり、別のところで笑ったりしているわけではなく、安村の狙い通りに観客と審査員は笑い転げたのだ。

「全裸に見えるポーズ」は、静止画で見るだけでも十分に滑稽で面白いものではあるのだが、フリを十分にきかせてからオチに向かう「ネタ」というパッケージで見せるのが一番面白い。このネタを思いついて、この見せ方を考えた、というクリエイティビティこそが真に評価されるべきものである。イギリスの観客と審査員にもそこがきちんと伝わっているように見えた。

 とにかく明るい安村は、日本のお笑いが世界に通用するかもしれないという「とにかく明るい夢」を見せてくれたからこそ、ここまで話題になったのだろう。

 その後、安村はセミファイナルで敗退したが、ワイルドカード(敗者復活)枠からファイナルに進出。惜しくも優勝こそ逃したものの、さらにスケールの大きいパフォーマンスで会場を沸かせた。

 先日のG7広島サミットの際には、駐日英国大使館の公式ツイッターでも「安心してください」と安村の決めフレーズが使われていたことが話題になった。安村は日本とイギリスを、そして日本と世界をつなぐ架け橋になるかもしれない。

ラリー遠田
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)など著書多数。

デイリー新潮編集部

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