債務上限問題は解決したが…日本人が考えている以上に遥かに深刻なアメリカの惨状

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バイデン氏もトランプ氏も歓迎しない米国民

 さらに深刻な問題は、債務上限を巡る混乱が災いして、国際金融市場での基軸ドルの地位が揺らいでいることだ。

 5月22日付ブルームバーグは「政策が招いた『傷』により米国の威信が低下し、金融市場での打撃は数年にわたって続く可能性がある」と指摘している。

 米国では2024年11月の大統領選に向けた前哨戦が始まっているが、現時点ではバイデン氏とトランプ氏の再戦の可能性が最も高くなっている。

 米CNNが5月中旬に実施した世論調査によれば、2024年の大統領選でバイデン氏が勝利した場合、「米国にとって後退あるいは災難になる」と答えたのは全体の66%だった。共和党の指名獲得争いでトップに立つトランプ氏が勝利した場合も、56%が「後退あるいは災難」と回答している。バイデン氏とトランプ氏のうち、いずれの勝利が「米国にとって災難」かを問う設問では、46%で両者が並んだ。

 このような状況について、米政治学者のイアン・ブレマー氏は「米大統領選、消去法の再対決へ」と題する論説で、「確実なのは2024年の米大統領選が見るも堪えない醜悪な戦いになるということだ」と悲観している(5月25日付日本経済新聞)。

政策も不評…米国への依存を減らす欧州

 米国政治への落胆は国際社会にも広がっている。

 CNN.co.jpは5月1日、「大統領が誰であれ米国は『当てにならない』 欧州で懐疑的な見方も」と題する米CNN記者の論説を掲載した。バイデン氏が中国への最大限の圧力というトランプ氏の外交政策を引き継いでいることから、「欧州は外交政策で独自路線を取り、米国への依存を減らそうとしている」という。

 バイデン政権が推し進める「米国第一」政策も評判が悪い。「米国経済の強化を目指したバイデン政権は、自国中心主義によってその影響力を低下させている」との批判が出ている(5月24日付クーリエ・ジャポン)。

 バイデン政権が掲げる「民主主義を独裁主義から守る戦い」についても、前述のブレマー氏は「(ドイツの)ベルリンの壁が崩壊したとき、旧東側(諸国)は米国を『民主主義輸出国』の手本と見た。でもこんにちはそんな状況にはない。米国のような国になりたいと思っている人はどこにもいない」と否定的だ(5月21日付AERA)。

 国際社会における米国の威信低下は、私たち日本人が考えている以上に深刻なのではないだろうか。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部

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