長野4人惨殺事件、警察が犯した「深刻なミス」とは 「盗聴」被害妄想の息子に銃を持たせた市議会議長にも責任が
専門家は「作戦は失敗」
その分、警察当局にも相応の準備が求められ、現場には今回、長野県警の要請を受けて警視庁の捜査1課特殊班(SIT)と神奈川県警の特殊急襲部隊(SAT)が派遣されている。
「県ごとに呼称は異なりますが、特殊班は各都道府県警の刑事部に属する誘拐事件や人質事件のスペシャリスト。犯人との交渉も担当し、人質の安全を保ちながら犯人を生きたまま確保することを目指します。SATは全国の8都道府県警にあり、警備部に所属。テロやハイジャック事件などの後方支援で出動し、突入や狙撃による制圧を任務としています」(警察庁担当記者)
そうした態勢で臨んだにもかかわらず、立てこもりはおよそ12時間に及び、その間、竹内さんは屋外に放置されたまま。最終的には犯人が投降したものの、半日間の長丁場が市民生活に甚大な影響を及ぼしたのは言うまでもない。
警視庁SATの元隊員である伊藤鋼一氏は、
「SATは四つのグループに大別されます。情報分析作戦指揮、遠距離から狙撃支援を行うスナイパー、突入、技術的支援です。今回の事件では神奈川県警察SAT所属の作戦指揮隊員とスナイパー隊員が派遣されたものと思われます」
そう解説した上で、
「警察にとって被害者救出は最優先です。交渉によって犯人を投降確保しているものの、被害に遭われた女性がずっと屋外に放置されていた点において、作戦は失敗だと思います。犯人との交渉を続けながら、20時半過ぎに犯人の母親が逃げ出す前に、倒れている被害者を救わねばなりません。さらに母親が逃げてきた時点で情報を共有し、まだ伯母が残っているとしても突入を決断すべきでした」
「本部長判断が遅かった」
それがかなわなかったのは、現場の県警捜査1課長と、最終判断を下す本部長の優柔不断が原因だというのだ。
「重大な立てこもり事件の際には、SITやSATを派遣する前にまず、警視庁と大阪府警にのみ置かれている警察庁指定のサポートチーム(タスクフォース)が現地に赴いて状況を見極めます。彼らは早期突入の具申もしているはずですが、今回は本部長判断が遅かったと思わざるを得ません」
実際に長野県警関係者は、
「自宅に複数の銃がある可能性もあり、県警による説得の電話は明け方まで複数回、行われていました。ところが男はこれを拒絶し、最後は父親に依頼せざるを得なかった。午前4時過ぎの通話で、男は父親に『どうしたらいい』と尋ね、父親が『警察に行くしかない』と促してようやく解決につながったのです」
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