長野4人惨殺事件、警察が犯した「深刻なミス」とは 「盗聴」被害妄想の息子に銃を持たせた市議会議長にも責任が
国内に17万丁以上の銃が
犯行に使った猟銃を含め、政憲容疑者は県公安委員会から計4丁の銃の所持を許可されていた。先のデスクが言う。
「内訳は散弾銃2丁と空気銃1丁、そしてライフル及び散弾銃以外の猟銃1丁。いずれも15年1月から19年2月にかけて『狩猟』『標的射撃』の目的で許可されています」
所持許可証を得るには講習会や試験を受けねばならず、アルコール中毒や精神疾患、ストーカー行為や犯罪歴などは欠格事由と見なされる。3年ごとの更新では医師による診断書が必要で、警察官との面談も定期的に行われている。
警察庁の統計によれば21年末の時点で、全国で約8万8千人が猟銃及び空気銃の所持を許可されており、数にして17万7700丁余りだというのだが、
「過去にも、許可を得た銃による犯罪が起きています。例えば07年、長崎県佐世保市のスポーツクラブで男が散弾銃を乱射、8人を死傷させて自殺を遂げている。これをきっかけに規制が強まり、申請時の診断書の作成が精神科医に限定されました」
それでも昨年1月には、埼玉県ふじみ野市で男が散弾銃で医師ら2人を死傷させる事件が発生。銃規制にかけては世界に比類なきわが国の現実がこれである。
銃を預けるシステムが有効?
犯罪学が専門である立正大学の小宮信夫教授が言う。
「今回のような事件は必ず起こります。銃規制に反対する人たちは“申請時にきちんとチェックすればいい”などと言いますが、検査や診断の当日は正常でも、翌日には激高して手元の銃を取り出すかもしれません」
銃の所持者を定期的に観察するのは不可能であり、
「生活範囲から銃を遠ざけるしかありません。現実的な預け場所は警察署、猟友会、射撃場の3カ所でしょう。他人に腹を立てても、警察署まで取りに行くハードルは高く、その間に気持ちが鎮まることもある。あるいは、1丁ごとにGPSをつけ、自宅から持ち出せば警察署に伝わる仕組みにするのも有効だと思います」
自家薬籠中の「合法銃」を振り回せるのだから、こんな手ごわい犯罪者はいまい。
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