長野4人惨殺事件、警察が犯した「深刻なミス」とは 「盗聴」被害妄想の息子に銃を持たせた市議会議長にも責任が
父は市議会議長の傍ら果樹園を営み、母はジェラート店を切り盛りするフラワーアーティスト。そんな地元の名家に、長男のどす黒いわだかまりが密かに増幅していた。長野県中野市の4人殺害立てこもり事件。猟銃を駆使する凶悪犯を、なぜ「排除」できなかったのか。
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それは、おぞましくも奇妙な「現場ドキュメント」だった。近隣の女性二人を刺殺、さらに駆けつけた警官二人を殺害して自宅に籠城した青木政憲容疑者(31)。犯行後およそ4時間をともにした母親(57)が、地元紙「信濃毎日新聞」5月28日朝刊で、以下のような息子との会話を明かしていたのだ。
〈お父さんもお母さんも罪を背負うから。自首しよう〉
〈絞首刑は一気に死ねない。そんな死に方は嫌だ〉
〈出頭できないなら一緒に死のう〉
〈母さんは撃てない〉
そんな息子に、母は驚くべき言葉で迫ったという。
〈お母さんがそばで見ているから。最後の場所は自分で決めて〉
〈だったらおれリンゴの木がいい〉
が、息子は思いを遂げられず、試行錯誤のなか空に向けて2回誤射してしまう。
〈意気地がないんだな。生きたいんだな〉
母親はそう考え、
〈だったらお母さんが撃とうか〉
と持ちかけ、
〈心臓の裏を撃ってくれ〉
そう言ってうつぶせになった息子から猟銃を受け取ると、そのまま脱出。が、重さに耐え切れず、近くに隠したという――。
殺傷力の強い「スラッグ弾」
事件発生は先月25日の16時過ぎ。青木家の前を歩いていた竹内靖子さん(70)と村上幸枝さん(66)を立て続けに刃物で刺し、政憲容疑者はいったん自宅に。そして、村上さんが倒れている現場に到着したパトカーに近づくと、運転席側から窓越しに猟銃を2発発砲。61歳と46歳の警官の命を奪ったのである。
「父親で中野市議会議長の正道さん(57)と母親は不在、母親の姉(60)が在宅中で、その後、正道さんから連絡を受けた母親が帰宅しました。政憲が持ち出した猟銃は散弾銃より威力の強いハーフライフルで、警官二人に発砲したのも、熊などの駆除に用いる、殺傷力の強い『スラッグ弾』でした」(全国紙社会部デスク)
件の母親は20時半過ぎに脱出。日付が変わって間もなく、伯母も自宅から逃れて保護された。最後は正道氏による電話での説得もあり、息子は午前4時37分、両手を上げて投降した。
「政憲は8時21分、まず運転席で撃たれた61歳巡査部長への殺人容疑で逮捕されました。女性二人を刺殺した動機については『(ひとり)ぼっちでいることをバカにされた』と話し、警官らについては『撃たれると思ったので先に撃った』と供述しています」(同)
記事で母親が明かした通り、犯行に使われたとみられる銃1丁が、現場近くの民家と土蔵の間から見つかり、県警に押収されている。
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