日本映画のアクションシーンは進化中 ずいぶん変わった業界事情をアクション監督・下村勇二氏が語る
配信メディアが日本のアクションの底上げに貢献
下村氏の近作は、7月28日公開の「キングダム 運命の炎」。「キングダム」(2019年)と「キングダム2 遥かなる大地へ」(2022年)に続く参加だ。主演の山﨑賢人は、撮影に入る約半年前から週3、4回、近くなるとほぼ毎日、アクションと馬術の稽古をしていたという。
「山﨑くんは絶妙な反射神経の持ち主。現場で敵役のスタントマンにわざと動きをずらしてもらうと、とてもリアルで面白いリアクションをします。それができるのは山﨑くんだからこそ。彼の魅力でもあります」
下村氏は漫画原作のNetflixオリジナルドラマ「今際の国のアリス」でも山﨑と顔を合わせている。山﨑と土屋太鳳、村上虹郎が異次元の東京で戦うというアクションスリラーで、世界的ヒットを記録した。
「当然ですが、どこの国の方が見ても面白いものを作らなければならない。その分、国内の規模ではできないことをやらせてもらっています」
国内規模ではできないこととは、たとえば実際の車を使ってのカーアクション。もちろん本番だけではなく特殊な仕掛けはテストも行うので、その分費用は掛かる。
「でも1度テストをしておけば、それがノウハウになり、次は安くできるし、改良もできるわけです。日本映画はそれがなかなかできないので、ノウハウが薄い。ハリウッドの『ワイルド・スピード』シリーズなんて、あんなにボンボン飛んでいるのに(笑)」
他にも「今際の国のアリス」シーズン2では、ウレタン素材の“アスファルト風”の道路をセットに敷き詰める工夫もした。
「俳優の衣装がパットのつけられない手足が露出したものだったので、ウレタンのアスファルトを提案しました。もちろん転べば多少痛いですが、大ケガにはならない。おかげで大胆なアクションシーンを撮ることができました」
世界でも受け入れられやすいジャンルは、やはりアクションやホラー。日本発の配信メディア向け実写作品にも、この2ジャンルが多い。しかもNetflixの場合、世界配信規模の作品を作る予算が確保されている。これまで培われたアクションの技術と人材が、その豊富な予算でブラッシュアップされていくわけだ。
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