ミスチル“桜井和寿”が憧れた伝説のボーカリスト「ROGUE・奥野敦士」 “車イス”で駆け抜けた「不屈のライブ」10年の軌跡

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「もうROGUEが解散することは絶対にないね」

 奥野はリハーサルの最中、車イスを操作して脚を持ち上げることが多い。そうしないと血液が下半身に溜まってしまい、貧血を起こすのだ。汗をかくこともないので、周りも気づかないうちに体温が上昇し、頭がボーっとして意識が遠のいてしまうという。歌いながら体を左右に揺らすのは、血液の循環を促すためでもある。それでも貧血を起こしそうになると、スタッフが奥野のカバンから薬を出して、さっと口に含ませる。

「スタッフは優しいでしょ。メンバーはここまで優しくないね、こんなに気を遣ってくれないよ(笑)」

 奥野の背後で聞いていた香川が、すかさず“反論”する。

「あえて昔と同じ扱いをしてやってるんだよ、これが本当のバリアフリーだ(笑)」

 香川がその場を離れた後で、改めて奥野にROGUE とGBGBに対する思いを尋ねた。

「オレは香川のことが大好きだよ。GBGBが終わっても、もうROGUEが解散することは絶対にないね。事故に遭って、こういう身体になって、周りの優しさに気付くことができた。若い頃はわからなかった。社会人経験もないままデビューして音楽だけやってきたから。 今はもう、死にたいと思うことはないよ。できることが少しずつ増えて、前向きな気持ちになれた。ミスチルの桜井君が背中を押してくれて、またこうして歌を歌えるようになったことがハッピーなんだ。最後のGBGBでは、事故で半身不随になったけど、それでも最終的に“こういう人間が出来上がった”というところを見てほしい。障碍を負って絶望しちゃう人は多いし、おれも障碍者施設で暮らしているから、暗くなっちゃう人も周りにたくさんいる。みんなこういう身体になったら“死にたい”って思うんだよ。もちろんその気持ちはわかる。でも、オレみたいにちゃんと復活できるんだってことを見てほしいね」

 最後のGBGBは吉川晃司、大黒摩季、リップスライムら多くのゲストを迎えて、6月10、11日、日本トーターグリーンドーム前橋にて開催される。もちろんROGUEは両日とも出演する。ROGUEの代表曲であり、ミスチル桜井がカバーした名曲「終わりのない歌」も、間違いなく披露されることだろう。その歌詞は、奥野が20代の頃に書かれたにもかかわらず、まもなく還暦を迎える彼の胸中を映し出しているかのようだ。

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