渡辺徹さんが時代劇で残した足跡 大河ドラマでは6作品に出演、近年は悪役も

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「感想を聞かせて」

 向井理・主演の「そろばん侍 風の市兵衛」(NHK・18年)。今でいう経営コンサルタントのような仕事をする市兵衛(向井理)は、派遣された醬油問屋で運搬船を使った不正の事実をつかむ。その指図をしていたのが、店の頭取・伊右衛門(渡辺)だった。奉公人たちを支配し、命を狙われる市兵衛たちを冷たく見つめる伊右衛門。今までとはまったく違うイメージで、こんな顔もあるんだと面白かった。

 思えば、渡辺が「はんなり菊太郎」に出演していた頃、私は名古屋の放送局の情報番組(司会・内藤剛志)に出る機会があり、メインゲストの渡辺と初めて直接話をした。楽屋で挨拶をした際、私が時代劇について書いていると知ると、「時代劇は俳優にとって学ぶことがたくさんある」「ぜひ出演作の感想を聞かせてほしい」と愛嬌たっぷりの笑顔で言われたのだった。肘を曲げて拳を顔の横にする、あの決めポーズもバッチリ見せていただいた。

 伊右衛門、よかったですよ! 時代劇の悪役はずっと足りないと言われているので、もっともっと出てください!!

 ついに伝えることができなかった。悔いが残る。

ペリー荻野(ぺりー・おぎの)
1962年生まれ。コラムニスト。時代劇研究家として知られ、時代劇主題歌オムニバスCD「ちょんまげ天国」をプロデュースし、「チョンマゲ愛好女子部」部長を務める。著書に「ちょんまげだけが人生さ」(NHK出版)、共著に「このマゲがスゴい!! マゲ女的時代劇ベスト100」(講談社)、「テレビの荒野を歩いた人たち」(新潮社)など多数。

デイリー新潮編集部

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