渡辺徹さんが時代劇で残した足跡 大河ドラマでは6作品に出演、近年は悪役も
ペリー荻野が出会った時代劇の100人。第19回は、昨年11月に亡くなった渡辺徹(1961~2022年)だ。
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俳優・渡辺徹は、1981年から85年まで出演した「太陽にほえろ!」(日本テレビ)のラガー刑事役や榊原郁恵と共演した84年「風の中のあいつ」(同前)など現代ドラマのイメージが強いが、時代劇でもさまざまな役柄を演じてきた。舞台人として2000年に菊田一夫演劇賞を受賞したのも、司馬遼太郎・原作の「功名が辻―山内一豊の妻―」の山内一豊役と、明治の牛鍋屋を描いた「あかさたな」の大森鉄平役の演技に対してであった。
映像作品では、6作に出演したNHK大河ドラマでのキャリアは、そのまま彼の俳優人生を象徴しているように見える。
大河ドラマ初出演は、橋田壽賀子・作の1986年「いのち」でこれは現代劇だったが、時代劇では同じく橋田作の89年「春日局」に出演。明智光秀の家臣の娘に生まれたおふく(大原麗子)が徳川秀忠(中村雅俊)とお江与(長山藍子)の嫡男・竹千代の乳母となり、彼を三代将軍・家光(江口洋介)に育て上げるまでを描いたこの作品で、渡辺は豊臣秀頼を演じた。秀頼といえば、豊臣唯一の跡取りとして過保護に育てられたひょろひょろした若殿と描かれることも多いが、渡辺秀頼はそのイメージを覆す(?)立派な体格で登場。「徳川めっ!」と目を三角にする強烈な母・淀殿(大空眞弓)と妻で家康の孫の千姫(野村真美)に挟まれながら、豊臣の未来を背負う若様だった。
その後、竹中直人・主演の96年「秀吉」では暴走しがちな秀吉の理解者である前田利家を、本木雅弘・主演の98年「徳川慶喜」では幕末の雄・西郷隆盛を演じた。「慶喜」の最終話「無血開城」で山岡鉄舟(伊武雅刀)と一対一で向き合った西郷は、尊敬する勝海舟(坂東八十助)からの書状を受け取ったが、「今は敵味方にて……」「我が方からの条件がござる……」と淡々と語り掛け、有無を言わせぬ圧を感じさせた。そして、無血開城後、がらんとした江戸城の大広間にすっくと立った軍服姿のシルエットは、顔も体型もまん丸で、西郷そのもの。「満を持してこの役に……」と思わせた。
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