ツール・ド・フランス7回完走の新城幸也が語るロードレースの醍醐味(小林信也)

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1日200キロ以上

「言葉もできずに行ったけど、自転車選手の生活が好きでしたね。晋一さんと弟の康司さんが借りていた農家の一室で。朝起きると農家のおばちゃんとコーヒーを飲みながらフランス語の勉強。午後は自転車で走る。自転車に乗るのが楽しかった。好きな所に行けて」

 起伏のある道を多い日には200キロ以上走った。

「朝起きると、強くなっているのが自分でわかるんです、感覚的に。苦しくて30キロをキープできなかった上りを次の日は楽に登れる」

 新城が顔を輝かせた。

「レースを走り始めてもっと好きになりました。初レースでいきなり200人もの選手に囲まれて走りました。普通に走っていてフルブレーキってないですよね。でも集団の中で走るにはフルブレーキもあるし、スプリントのダッシュもある」

 常に細かくハンドル操作し、自転車を左右に動かして衝突を回避する。

「何だこんな動き!って。自分が自転車をくねくね操れるなんて、レースに出るまで思わなかった」

 経験のない動きを自然にやっている自分に驚いた。福島が言った才能の一端に自ら気付いた瞬間だった。

「初レースは見事に転びました。集団から遅れてリタイア。2戦目もパンク。5戦目で5位か6位に入った。その時ですね。『もしかしたら自転車で強くなれるんじゃないの?』と自信が湧いたのは。それで教員をあきらめて、自転車をやってみようと決めました」

 3カ月後、石垣島に戻る時、新城は1週間でフランスに戻る航空券を買っていた。帰国して両親に告げた。

「またフランスに行って、自転車をやる」

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