藤井聡太が史上最年少名人に 恩師・文本力雄さんが懐かしむ“オレンジジュース事件”

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子どもの頃はジュースをこぼして泣いたことも

 初日は、先手の渡辺が玉を最下段に据える変形の「矢倉」、後手の藤井が「雁木」に駒を組む落ち着いた展開。2日目、渡辺優位の展開の中、藤井が「6六」に角を上げて渡辺陣を脅かした。これを金で取らず、「2三桂」と攻めにいったのが大きな敗因だったようで、渡辺も局後、「『6六角』への対応がまずかった」と後悔した。

 藤井の角2枚は最後まで攻守に効いていた。ABEMAで解説していた広瀬章人八段(36)は「『6六角』を完全に取り損ねた感がありますね」と指摘した。

 あっという間に藤井優勢に転じ、終盤、「5九飛」の王手を渡辺は金を打って守った。その後、94手目に藤井が「8七銀」を打つと、渡辺はあまり間を置かずに投了した。

 渡辺はかなり前から観念していた様子で、将棋盤から目を離すことも多く、落ち着かない様子になっていた。将棋界の歴史が塗り替えられたのは午後6時43分だった。

 新名人が子供の頃に通った「ふみもと子供将棋教室」(愛知県瀬戸市)の文本力雄さんは、愛弟子を厳しく見る。

「居飛車が基本なので、教室では振り飛車は初段を取るまで禁止していました。初段になったら振り飛車を選んでもでもいいと言ったが聡太は選ばず、居飛車を極めて名人になったんです。でも、まだまだ修行の段階ですよ。名人も聡太にとっては全冠制覇などへの一里塚でしかないはず」

 それでも「記者会見とかで見る聡太は、ちょっと優等生過ぎる感がありますね。別に羽目を外さずさなくてもいいですけれど、もう少し二十歳らしくのびのびとして面白いことを言ったっていいのではないかな。あれでは自分で窮屈になってしまい、しんどいんじゃないでしょうか」と親心も見せた。

 最近はもう、藤井がタイトルを取るたびに教室でお祝いをしたりすることはなくなったそうだ。文本さんは「聡太がここにいた頃は、大会で彼が優勝するたびにお祝い会をしました。お金がないからコンソメチップスとオレンジジュ―ス。『大事なジュースだから絶対こぼすなよ』と言っていたが、運悪く聡太がこぼしたので怒ったら大泣きしてしまいましたよ」と懐かしむ。

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