臭い玉、角栓に粉瘤… 「人体の異物」マニアにとっては老いも楽しみの一つになる(中川淳一郎)

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 昔から、体内から出る異物を見るのが好きでした。イチゴの種のごとく鼻についた角栓やら、膿を押してキュルキュルと白い物体が出てくる様など、本当に気持ちがいい。あとはヒゲを抜くのも楽しい。

 こんな性向があるわけですが、今やこの手の人間にとっては最高の時代になっております。というのも、YouTubeにはこの手の異物を体内から除去する動画が大量に公開されているのです。

 キーワードとしては「ほくろ毛」「角栓」「埋没毛」「粉瘤」「臭い玉」などがありますが、こうした異物を体内から除去する動画がたくさん投稿されているのです。しかも、マイクロスコープを使って拡大したような動画もあり、もぉ、「異物除去マニア」としては最高の動画だらけなのです。

 いろいろと人間の体には不思議なものってあるじゃないですか。「膝の水」やら「腎臓の石」とか。こういうのがネットではすぐに画像として出てきてくれるのです。

 さて「臭い玉」ですが、これは、喉にたまった膿のような白っぽい異物のことです。咳をした時に時々排出される猛烈に臭いアレです。ネットではこれらを一つ一つ取り出す様が動画で残っています。

 それらを取り出す様子を見ながら「違う違う! もう少し左の部分に突っ込め!」などと言うのも醍醐味であります。この手のマイナーな趣味はあまり人々から共感は得られませんが、「YouTubeにはオレと同じ嗜好を持っている人がいるんだ!」と安心できるわけです。

 それにしても人体って分からないですよね。なんで、このようにどうでもいい角栓やら「臭い玉」などを作りだすことができるのでしょうか。2017年に、右の腿にある「粉瘤」を除去する手術をしたことがあるのですが、医者は「別に取らなくてもいいですが取りますかー?」とのんきな様子。

 私は腿に入っている異物が一体どんなものかを見たいため「取ってください! 手術してください!」とお願いをしたのですが「じゃあ、今からやりますよー」というまさかの展開に。その15分後、体内から出てきた粉瘤は怪しげな目玉のような異物だったのです。

 以後、人間の怪しいモノ製造能力に感銘を受けた私は、膿や角栓に多大なる興味を抱くようになったのであります。

 怪しいモノは、35歳を過ぎたあたりから多数出てきましたが、もうすぐ50歳。これからますます怪しいモノが体内から生成されるのかと考えると楽しみで仕方がありません。老いを感じ、人生に絶望する方もいらっしゃるとは思いますが、こうした体内発の異物を見ることを楽しみにする人生というものも悪くはないのでは。

 とにかく今、自身の体力低下等に悩む方はYouTubeにアクセスし、「粉瘤」「臭い玉」等の検索をすることをお勧めします。海外発動画もあり、世の中にはなんとダイナミックな異物を持つヤツがいるのだ!と仰天すること間違いありません。そんな彼らも元気に今を生きているのですから、皆さんも明るく生きられることでしょう。自分の悩みは他人も悩む。その事実を知るだけで人生はラクになりますよ。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ。ネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』等。

まんきつ
1975(昭和50)年埼玉県生まれ。日本大学藝術学部卒。ブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」で注目を浴び、漫画家、イラストレーターとして活躍。著書に『アル中ワンダーランド』(扶桑社)『ハルモヤさん』(新潮社)など。

週刊新潮 2023年6月1日号掲載

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