PGAツアー“予選落ちなしの大会”が批判を浴びるワケ かつてリブゴルフを批判した矛盾も露呈
ゴルフ界では今なおPGAツアーとリブゴルフの対立が続いているが、そんな中、今度はPGAツアーの内部から不協和音が聞こえてくる。しかも、その不協和音は「帝王」ジャック・ニクラス(83)や「王者」タイガー・ウッズ(47)から発せられており、ゴルフ関係者の間に不安が広がっている。【舩越園子/ゴルフジャーナリスト】
【写真】昭和61年サントリーオープンに出場したジャック・ニクラス
「レガシー」3大会
PGAツアーには、ゴルフ界のレジェンドが大会ホストを務め、「レガシー」と呼ばれる大会が3つある。1つは「キング」アーノルド・パーマー(1929~2016)が大会ホストを務めていたアーノルド・パーマー招待、2つ目は「帝王」ジャック・ニクラスがホストを務めるザ・メモリアルトーナメント、そして3つ目は「王者」タイガー・ウッズの大会と呼ばれているザ・ジェネシス招待だ。
この3大会は昨年まで、他のレギュラー大会よりグレードの高い大会として位置付けられていた。
たとえば、優勝者に付与されるシード権は、他のレギュラー大会が2年間なのに対し、レガシーは3年間。賞金額も格段に高く設定されていた。レジェンドと並んで表彰式に立ち、記念写真に収まることは、「この上ない光栄」と見なされてきた。
それゆえ、レガシーと呼ばれる3大会は多くの選手が出場を望み、黙っていてもビッグネームが多数集まった。
リブゴルフ選手は出場できない
今週、オハイオ州ダブリンのミュアフィールドビレッジGCで開催されているザ・メモリアルトーナメントにも、世界ランキングのトップ10のうちの7名、トップ50からも38名が参加。これらの数字は、今大会がいかに強いフィールドかを示している。
しかし、2週間前に全米プロを制してメジャー5勝目を挙げたばかりのブルックス・ケプカ(33)の姿はなく、2018年の覇者であるブライソン・デシャンボー(29)や、かつてはこの大会の常連だったフィル・ミケルソン(52)、ダスティン・ジョンソン(38)らも出場していない。リブゴルフ選手となったことでPGAツアーから出場停止処分を科されている彼らは、出場したくても出場できない状況にあるのだ。
大会ホストのニクラスは「彼らは自分の意思でPGAツアーから離れ、リブゴルフに移ることを選んだのだ。そしてPGAツアーにはPGAツアーの決まりがある。決まりに反した彼らが今ここに居ないことは当然のことであって、私は気にも留めていない」と強い語調で言い放った。
ちょっぴり強がりのように聞こえないこともない。だが、ニクラスが今最も気に留めているのは、リブゴルフ選手の出場可否ではなく他にあることは確かだ。
ニクラスはPGAツアーの決定に異を唱え、来年のメモリアルでも「予選カットは絶対に行なうべし」と声を大にしている。
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