作家・錦見映理子が「全身ピンク色の教師」から学んだこと ふと思い出して小説のモデルに
自分の「好き」を貫き通して生きること
彼女は担任でもなかったし、家庭科の時間以外に接点はなかった。虫の知らせがあるような、縁はなかったはずだ。
でも、先生と私にはたった一つだけ共通点があった。ピンクが好きなことだ。40年前の入学式で変だと思った、先生の桜色のワンピースを今も忘れられないのは、本当はあの時、何となくわかったからだ。あの素敵な色の服を、どうしても着たかった気持ちが。
いくつになろうがピンク色を着て何が悪いんだ、とあの頃先生が思っていたかどうかわからないけれど、私が書いた小説の中で、先生に似て非なる登場人物はそう思っていた。
誰にどう思われようと、自分の「好き」を貫き通して生きること。それが私の初めて書いた小説のテーマになった。ピンクは鈴木先生の毎日を支え、私の人生を変えたのだ。
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