作家・錦見映理子が「全身ピンク色の教師」から学んだこと ふと思い出して小説のモデルに
ピンクの服ばかり着ていた中年の女性教諭
『リトルガールズ』で太宰治賞を受賞し、最新刊『恋愛の発酵と腐敗について』でも話題を集める小説家で歌人の錦見映理子さん。学生時代、ピンク色の服ばかりを着ていた家庭科の女性教諭のことを、あるときふと思い出した彼女は……。
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中学を卒業してから会うこともなかった「ピンク」のことを突然思い出したのは、小説を書きたいなあ、とぼんやり考えていた、48歳の秋のことだった。
毎日のように全身ピンク色の服を着ていた独身の家庭科教師のことを、私たち生徒は「ピンク」とか「ピンクばばあ」というあだ名で呼んでいた。...