今さら独身女性の体外受精を認めても…中国の人口減に拍車をかける“若者の絶望的な状況”とは
経済発展が急速なら、子育て環境の悪化も急速
「我が国の人口動態の新たな状況を十分に理解し、適切に扱わなければならない」
【写真5枚】訪日した中国人富裕層向けの「破廉恥パーティ」 “女体”を献上など【実際の写真】
中国の習近平国家主席は5月5日に開かれた会議の場でこのように述べ、新たな時代に合わせて人口発展戦略を改善するよう求めた(5月8日付ブルームバーグ)。
中国の人口は昨年、14億1175万人となり、前年に比べて85万人減少した。減少に転じたのは61年ぶりのことで、出生率も過去73年間で最低となった。
習氏の発言から10日後、中国政府系メディア「環球時報」は、「新時代の結婚・出産文化を構築する」試行プロジェクトの開始を報じた。適齢での結婚と出産の促進など、子供を産みやすい環境づくりを目指す内容だ。中国政府はこれまで禁止していた独身女性の体外受精も一部の地域で認めるようになっている(5月15日付・7日付ロイター)。
今年に入り、人口減に歯止めをかけるための対策が相次いで講じられている形だが、はたしてうまくいくのだろうか。
急速な経済発展のせいで、中国の子育て環境は急速に悪化している。昨年の農民工(出稼ぎ労働者)の数は前年比311万人増の2億9562万人に達し、人口流動化の影響を受ける子供の数が年々増加している。
中国国家統計局が国連と共同で実施した調査によれば、2020年時点の流動児童(出稼ぎの両親と一緒に出生地を離れた子供)の数は約7100万人、留守児童(出稼ぎの両親と離れて出生地で暮らす子供)の数は約6700万人に上る。両者の合計(約1億3800万人)が子供の総数(約2億9800万人)に占める比率は46%強に達し、20年前に比べ8800万人増加している。
専門家は「生活や学習面でのサポートが不足しており、子供たちをケアする親の負担が高いままだ」と危惧している(5月23日付東洋経済オンライン)。
「26歳でお金がない」と主張する若者たち
人口流動化以上に悪影響を及ぼしているのは、養育費の高さだ。
中国の人口・公共政策研究機関「育媧人口研究智庫」によれば、中国で18歳まで子供を育てるためにかかる費用は1人当たり国内総生産(GDP)の6.9倍。出生率が世界最低とされる韓国(7.79倍)に次いで世界で2番目に高い。
子育てに金がかかるのにもかかわらず、若者の懐事情は厳しくなるばかりだ。
中国版Twitterの微博(ウェイボー)では、「26歳のリアルな預金額」と題する公開スレッドが注目された。そこに寄せられている投稿の多くは、自身の銀行口座の残高を添えて「26歳でお金がない」と主張する内容だ。このスレッドは、これまで3億人以上の中国人が見たと言われている(5月23日付BUSINESS INSIDER JAPAN)。
投稿された若者たちの預金額は様々だが、いずれの投稿もチャイニーズ・ドリームの消滅と若者たちの痛みがにじむ。
彼らの窮状の原因は、雇用状況の厳しさにある。4月の若年層(16~24歳)の失業率は20%を超えた。今年の大卒者数は過去最高の1158万人となることが見込まれており、雇用環境が今後も悪化するのは確実な情勢だ。
「弱り目に祟り目」ではないが、中国の保健当局が「新型コロナウイルス感染が再拡大し、ピークを迎える6月末に週間ベースで約6500万人が感染する」との試算を示したことも心配だ。
ゼロ・コロナ政策が解除されたことでサービス業を中心に雇用が拡大し始めていたが、再びコロナ対策が実施されるような事態になれば、この動きに「冷や水」が浴びせられることになるからだ。
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