過去最高益のソニーが金融部門を切り離す理由 映画や半導体より儲かっているのになぜ?
テレビCMでおなじみのソニー損保や、ソニー銀行、ソニー生命などはソニーグループ(以下ソニー)の金融事業である。同社の金融事業は売り上げの12.5%を占め、映画や半導体よりも儲かっている。
その金融事業をソニー本体から分離することが明らかになったのは5月18日のことである。
「この日、ソニーでは十時裕樹社長と吉田憲一郎会長が出席する経営方針説明会が開かれたのですが、2、3年後をめどに金融事業の分離と上場を検討していることが明らかにされたのです」(経済部のデスク)
これが、驚きをもって受け止められたのには理由がある。
「ソニーの金融事業は歴史が古く、ソニーの子会社『ソニーフィナンシャルホールディングス』として上場していました。しかし、親子上場を問題にした米投資ファンドのサード・ポイントが金融事業などの切り離しを求めたところ、2020年、吉田社長(当時)が、逆に約4千億円を投じて完全子会社にしたという経緯があります」(同)
ソニーの前年度決算は営業利益1兆2082億円と最高益を記録したが、金融事業が無ければ1兆円を割り込んでいたに違いない。ソニーが不振の時代も親会社を支えてきた“孝行息子”をわざわざ切り離すのはどうしてなのか。
ソニーに聞くと…
そこで、ソニーに聞くと、
「当社の金融事業は今後多額の投資が必要になると見込まれています。そこでソニー本体から分離することで独自の資金調達ができるようになり、経営の自由度も増します。社内では今年2月から検討されていたことです」(広報担当者)
同社によると分離はパーシャル・スピンオフという方法で行われ、上場後も20%弱をソニーが保有することになる。上場した会社の株はソニーの株主に現物で割り当てられるという。
もちろん、投資ファンドなどから要求があったわけではないとのことだが、経済評論家の加谷珪一氏が言うのだ。
「グローバルな企業を見回すと、本業と関係の薄い事業は整理してどんどん独立させてゆくのが流れになっています。プロスポーツ選手が野球とバスケットを同時にできないように、得意なものを残し、不得手な事業は手放す。そうしなければ株価は上がらないし、株主からまたプレッシャーを受けることになります」
「勝ち組」のソニーもあぐらをかいている場合ではないのだ。