いとうあさこに芸人特有の臭いがしないのはなぜか

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明るく爽やかで、どこか品の良さを感じさせる

 いとうは初めからお笑いの道を志していたわけではないので、良い意味でそこに縛られていない部分がある。彼女は常に芸能界の高みを目指して憧れを抱き、たまたまお笑いに流れ着いただけなので、芸人特有のコンプレックスや問題意識とは無縁だったのだ。

 5月16日放送の「証言者バラエティ アンタウォッチマン!」(テレビ朝日)では「2010年のいとうあさこSP」と題して、いとうあさこの芸人人生を振り返る企画が行われていた。ここでは、彼女が単なる一発屋で終わらずに息の長い芸人となった理由が明かされていた。

 いとうのブレークのきっかけとなったのは、前述のレオタード姿の自虐ネタである。その後、バラエティ番組に出る際に、彼女はレオタード姿ではなく普通の衣装を意図的に選んだ。そのことで、ただのキャラクターとして消費されることなく、素の自分を見せることに成功したのである。

 すでにアラフォーを超えてアラフィフ世代となった彼女は、相変わらず明るく爽やかで、体を張ったヨゴレ仕事をしていても、どこか品の良さを感じさせる。そんな資質を備えた同世代の女性タレントがほかにいないからこそ、彼女の存在感が際立っている。

 いとうが築いた現在のポジションは唯一無二のものであり、今後も長く活躍が期待できるだろう。

ラリー遠田
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)など著書多数。

デイリー新潮編集部

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