「まずは塩で」ブームから陳腐なフレーズへ 江戸っ子の家生まれのライター・古賀及子が語る裕福な祖母との思い出

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「塩で食べる」は一気に陳腐化

 流行により、塩で食べるのをすすめることが一気に陳腐化したのはそのすぐ後だったように思う。

「まずは塩で召し上がってみてください」とはじめて言われて驚く私と得意げな祖母、あれは、塩で食べることをすすめられる現象の、一周目の手ざわりだった。私にとって、東京の記憶そのものだ。

 天ぷらを食べた帰り、祖母に誘われこっそりパチンコを打った。私はまだ高校生だったから本当はいけない。ばちが当たってかすぐに負けて、苦笑いしながらタクシーで赤坂に帰った。

 祖父は長く生きたが、祖母はバブル崩壊後すぐにがんで亡くなった。派手にお金が使えないなら死んだ方がましというように去ってしまった。

古賀及子(こが・ちかこ)
1979年東京都生まれ。ライター、編集者。近著に『ちょっと踊ったりすぐにかけだす』がある。

デイリー新潮編集部

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