【自公決裂の深層】後援会名簿の提出、自民候補をランク付けでトラブルも…元公明党議員が語る“選挙協力への本音”
28区に執着した理由
国政選挙なら候補者の調整が可能だが、地方の議会選挙では自民党と公明党の候補者が激突することも多い。
「県議選や市議選でも、公明党は自民党の候補者から提供された後援会名簿を利活用して選挙を戦います。その煽りを喰らって落選した自民党系の候補もいますから、自民党側から『それは話が違うだろう』と問題視する声が上がっていました。しかも2025年7月には都議会議員選挙が行われる予定です。自民党都連の中には、公明党と選挙協力などしたくないという声があるのも事実です」(同・元議員)
5月21日に投開票された足立区議会議員選挙で、公明党は候補者13人を全員当選させた。一方、19人を擁立した自民党の当選者は12人にとどまった。同じことが都議選で起きることだけは避けたいはずだ。
一方の公明党だが、なぜ28区の候補者擁立に執念を燃やしたのだろうか。
「近年、少子高齢化の影響もあり、創価学会員の高齢化と減少が顕著になっています。以前の公明党は小選挙区で勝つのは至難の業でしたが、その分、比例区は安定し、取りこぼしがありませんでした。ところが組織票が減少し、比例区で落選する候補者が出てきた一方、支持層の票を小選挙区に集中すれば、場合によっては勝つことも分かったのです。そこで公明=学会としては、比例区の落選に備え、28区で1人当選を確実にしておきたかったわけです」(同・元議員)
“当選御礼”のトラブル
冒頭で紹介した時事通信の記事には《自民内では協力解消の動きが東京以外にも広がりかねないとの懸念も出ている》との記述がある。
もっとも、自民党と公明党の選挙協力体制が“盤石”で、両党が“一枚岩”になったことは一度もないという。
「自公の選挙協力は、昔から様々な軋轢を両党にもたらしてきました。その中の一つに自民党議員の“当選御礼”があります。接戦を学会票で辛勝した場合など、自民党の議員は感謝の気持ちから“御礼”を持って挨拶に来ることがあります。学会はクリーンな体質が武器であり、びた一文使わなくても選挙で大量の動員が可能という点に強さがあります。とはいえ、受け取ってしまう地方幹部もいるのです」(同・元議員)
清濁併せ呑むという言葉がある。“当選御礼”を受け取ることで自民党と太いパイプを構築し、指導力を発揮する地方幹部もいる。
「ところが、学会にはクリーンであることを最優先に考える人も少なくありません。『自民党と癒着するような奴の指示なんか従えるか!』と猛反発するケースも起きてしまいました。いくつかの地域では“天皇”の異名を持つ剛腕の地方幹部が出た一方で、清廉を求めるグループが猛反発して対立が深刻になりました。慌てて学会が『公務員レベルの清廉性が求められる』と強く注意したほどです」(同・元議員)
[2/3ページ]