【叡王戦】藤井六冠が「指し直し2回」の末に菅井八段を破り防衛 印象深い5年前にもあった「千日手」の名対局
将棋の叡王戦五番勝負(主催:不二家)の第4局が5月28日に岩手県宮古市で行われ、3連覇に王手をかけていた藤井聡太六冠(20)が挑戦者の菅井竜也八段(31)を破り、通算成績3勝1敗でタイトルを防衛した。同じ局面が4度繰り返された際に勝負を無効とする「千日手」が2回も現れ、1日で3局も指す激戦だった。藤井は並行して行われている名人戦で渡辺明名人(39)からタイトル奪取をすれば「最年少名人」になるとともに、羽生善治九段(52)以来の七冠となる。【粟野仁雄/ジャーナリスト】
2度の千日手に驚き
対局後、藤井は「難しい将棋ばかり。相穴熊が多かったですが、距離感がつかめていなかった」などと反省の弁を述べた。藤井は今週31日から長野高山村で行われる名人戦第5局に臨む。菅井は2017年の王位獲得以来、久しぶりのタイトルを目指したが届かなかった。
「岩手県は初めて」という2人は、対局前日、名勝・浄土ヶ浜を巡る遊覧船に乗り、甲板からウミネコに餌のパンを投げてやるなど楽しいひと時を過ごしたそうだ。藤井は「餌をうまくやれなかった。何かコツがあるのかな」などと話し、菅井は「船は嫌いだったのですが好きになった」と話した。
翌朝9時から始まった対局は、一転、壮絶な戦いとなる。
立会人は森内俊之九段(十八世名人資格=52)。先手の菅井が三間に飛車を振り、後手の藤井が居飛車で早いペースで進んでいたが、午前10時51分、藤井が44手目 を指したところで千日手となった。有利だとされる先手番の菅井は、千日手を避けなかったのだ。
休憩を挟んで11時半から、先手と後手を入れ替えて最初から指し直す。消費時間はそのまま持ち越す。
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