キャセイ航空 中国乗客「差別事件」で“謝罪4度”と“CA解雇”でも炎上し続けた裏事情

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「香港における中国差別」を声高に叫ぶ香港政府

 たった一週間の間に繰り広げられた、“官民一体”の集中砲火。近年増加している「中国を蔑めた」存在への糾弾行為の中でも、トップクラスの炎上速度と規模を記録した。さらには同社で過去に起こった類似のトラブルも掘り返され、批判の対象は企業体質にも及んだ。この根底には、「香港に見下されている」という積年の不満が見て取れる。

 では、なぜ客室乗務員たちは「差別」をしたのか。香港が中国に抱く「複雑な感情」があるという見立ては多い。「香港における中国差別」は以前から物議を醸している。1997年の返還から26年を迎え、着々と“中国化”が進む現状を、すべての香港市民が前向きに歓迎しているとは言えない。

 ただし香港市民の間には、「客室乗務員たちの行為は明らかに良くないが……」とした上で、少し違う角度の言い分もあるようだ。たとえば「香港政府が『香港における中国差別』と結び付けすぎている」という指摘。「悪いことではない」と内心で開き直っているわけではない。中国国内にそもそも存在する「地域間の軋轢」の一パターンではないかという見方によるものである。

 いち早く経済発展を遂げた上海には、「中国イチの国際都市」という自負があり、優越感を隠さない上海人もいるとされる。「鼻持ちならない」として他の地域から文句を言われがちなポジションだ。返還後の香港がこの上海と同じ枠に入ったと考える層には、香港政府が以前から「香港における中国差別」を声高に叫ぶことを不思議に思う向きがある。ちなみに、解雇された客室乗務員たちの国籍は公式に発表されていない。

 また行き過ぎた集中砲火に違和感を抱く層からは、「解雇はやりすぎ」という声もある。この違和感は、「中国側があえて炎上させた」説にもつながる。炎上速度と広すぎる規模、中国メディアによる絶え間ない燃料供給や、繁体字版Wikipediaの素早く細かい編集などを「不自然」とする見方である。炎上させた理由として挙げられているのは、国内問題に対する不満の転嫁。中国では現在、地方都市の経済悪化が問題視されている。

 現在の中国内地発キャセイ便では中国語の機内放送が流れ、「ブランケットは必要ですか」と中国語で尋ねていると報じられた。炎上はさすがに収束傾向だが、他の航空会社にも飛び火している。中国南方航空のシンガポール人スタッフによる「差別行為」だ。この新たな流れがふたたび大炎上につながるのか、それともフィナーレなのか、微妙なところである。

デイリー新潮編集部

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