血圧、血糖値、中性脂肪の低下を証明、運動と同じ効果も? 万能薬・お酢の知られざる効能とは
減塩効果も
調理場面で活躍するお酢の効果は、もちろん殺菌・静菌だけではありません。カルシウムやマグネシウムの溶出促進というのも代表的なものの一つといえます。
前回の記事で、お酢には体内でカルシウムの吸収を促進する効果があり、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)の予防に有効だという話をしました。これに加え、お酢には食材からカルシウムやマグネシウムなどのミネラルを溶出させる機能も知られているのです。
お酢のこの働きはアサリや鶏の手羽元を使った料理で真価を発揮します。貝殻や鶏の骨はカルシウムやマグネシウムを豊富に含む食材ではありますが、当然、食べずに廃棄されますよね。でも骨付きの鶏肉を酢で煮込んだ「さっぱり煮」や、殻付きのアサリを白ワインビネガーなどで蒸した「ビネガー蒸し」では殻や骨に含まれるカルシウムやマグネシウムが料理に溶け出し、より多くのミネラル分を摂取することができます。
殻付きアサリ100グラムを用いたスープ料理では、ワインビネガーを用いなかった場合のカルシウム量が95ミリグラムだったのに対し、用いた場合は120ミリグラム。実際にカルシウムの溶出を促進する効果が確認されているのです。
また、料理に酢を使用する際の効果としては「減塩」も外せません。お酢が高血圧そのものの予防にも有効なのはすでに触れた通り。ですが、高血圧の原因になる「塩」を減らすのにも、もってこいの調味料なのです。
味が物足りない――多くの人が減塩に失敗してしまう一番の理由がこれだと思いますが、お酢には塩に頼らずに味を増強する効果が認められます。私たちは物を口にする際、塩味や酸味などを明確に味わい分けて食べているかというと、必ずしもそうではありません。薄味の料理を食べていて「なんだか物足りない」と思うのは、ざっくり言えば舌を刺激するレベルが低いからなんです。だから、料理の隠し味に酢を使えば、塩を減らしても満足のいく味わいが得られるのです。
どんなレシピがおすすめ?
酢で味が増強されるというのがイメージしにくい人は「味付けポン酢」と「醤油」を比べてもらうと分かりやすいと思います。味付けポン酢に含まれている食塩の濃度は醤油のたった半分。でも醤油と同等またはそれ以上に味をしっかり感じることができます。
わが家ではお客さんが来た際に、お酢を加えたミネストローネ(野菜のトマトスープ)を振る舞っていて、これが好評。蒸発を防ぐためお酢は完成時に加えるのですが、4人分のミネストローネに、リンゴ酢やワインビネガーを大さじ1杯半程度入れるだけで酸味がより引き立ちとてもおいしく仕上がります。
それから意外なところでいうとポテトサラダとお酢もよく合う組み合わせです。食酢メーカーが行った、人間の感覚を利用した官能評価では、ポテトサラダにお酢を加えると酸味が高まるとともに塩味を強く感じることが分かっている。4人分に対して大さじ1杯半程度のお酢を加えるだけで味のバランスや全体のおいしさも高まります。
また、私のゼミにいた学生が考案した「春雨サラダ」もお勧め。レシピ(1人分)はいたって簡単で、耐熱容器に穀物酢50ミリリットル、水150ミリリットルを入れ、砂糖小さじ1杯、塩少々を加える。そこに5センチの長さに切った春雨15グラムを投入しレンジで3~4分加熱。容器から春雨を取り出し、キュウリやトマト、錦糸卵といったお好みの具材と混ぜ合わせれば完成です。容器に残った調味液はその後、酢の物などに再利用することもできます。
この料理のポイントはレンジでチンした春雨が食酢を吸収してくれるという点。春雨が吸収した水分にはお酢15ミリリットル分に相当する酢酸が含まれますが、春雨は細かく咀嚼(そしゃく)することなく飲み込んでしまうので、あまり酸っぱさを感じることもありません。
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