甲子園で巨人監督にヘビを投げつけたファンも…昭和のプロ野球で本当にあった珍事件

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球審のメガネに八つ当たり

 今も昔も判定をめぐる監督、選手と審判とのトラブルの種は尽きない。昭和のプロ野球では、審判への暴行で退場になったり、時には無期限出場停止処分を受けるなどの殺伐とした事件が起きる一方で、どこかユーモラスで、のどかなテイストを感じさせる“珍風景”も見られている。【久保田龍雄/ライター】

 本塁クロスプレーの判定に納得がいかず、「ピントが合っていない」と球審のメガネに八つ当たりしたのが、巨人時代の水原茂監督(当時の登録名は水原円裕)である。

 1956年7月31日の阪神戦、両チーム無得点で迎えた6回裏、阪神は1死三塁から後藤次男の三ゴロで三塁走者・田宮謙次郎が本塁を突いた。サード・岩本尭が素早く本塁に送球し、捕手・藤尾茂もスライディングする田宮にほぼ同時にタッチしたことから、アウトかセーフか微妙なタイミングになった。

 だが、小柴重吉球審はセーフをコールした(記録は野選)。直後、巨人・水原監督が三塁側ベンチを飛び出し、「アウトじゃないか!」と激しく抗議した。「藤尾が大きく回り込んだのなら(セーフでも)頷けるが、岩本の返球を受けた位置も良く、タイミングも文句なくアウトだ。僕は小柴球審がどこを見ていたのだと言いたいのだ」というのが言い分だった。

メガネをプレゼントして手打ちに

 一方、小柴球審も「(藤尾の)タッチが緩慢で、(田宮の)足が早かった。私の判断は自信がある」と一歩も譲らない。すると、水原監督は突然小柴球審がかけていたメガネをむしり取り、「お前の老メガネは、度が合っているのか?」と暴言を口にしたため、「私個人よりも審判団を侮辱した行為」(小柴球審)として退場処分になった。

 トラブルで試合が中断している間、興奮したファンがスタンドから蛇のアオダイショウを水原監督に目がけて投げつけたという話も伝わっている。水原監督は蛇が大の苦手だった。

「平成の大改修」以前の甲子園には、1メートルを超えるアオダイショウが棲んでいたことで知られるが、大改修より半世紀以上も前の当時は、球場内の蔦の中に当たり前のように潜んでいたようだ。

「たとえミスジャッジでも服さなければならないが、あんな判定ではとても承服できない」と退場後も怒りが収まらなかった水原監督だが、その後、小柴球審にドイツ製のメガネをプレゼントして、めでたく手打ちとなった。

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