ウクライナ空軍に必要なのは小型攻撃機「AT-6E」 バイデンはなぜ今さら「F-16」の供与を認めたのか

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小型攻撃機の実力

 イギリスは5月、ウクライナに長距離巡航ミサイル「ストーム・シャドウ」を提供すると発表した。ユーロファイターを引き渡せなかったた代わりとして、ストーム・シャドウを提供したと見る専門家もいるという。

 戦闘機が無理なら他の軍用機で使えるものはないのだろうか。NATO加盟国は攻撃ヘリAH-64「アパッチ」をはじめ、ロシア軍を圧倒できる多数の航空兵器を運用している。

「ウクライナ空軍のパイロットが簡単に操縦できないという意味では、どの軍用機もF-16と変わりません。もしアメリカが本気でウクライナ空軍の攻撃力を増強したいのなら、AT-6Eというプロペラの小型攻撃機が最も理想的です」(同・軍事ジャーナリスト)

 T-6テキサンIIは1990年から運用を開始した練習機だ。近年、アメリカ空軍は、この複座のプロペラ機を攻撃機にするメリットに気づいたという。

「アメリカ空軍は2000年代後半に練習機T-6から超小型爆撃機AT-6Eを開発し、実戦に使用可能かテストしました。小さな飛行機ですが、翼に機関銃、対空ロケット、爆弾など様々な兵器を搭載することが可能です。さらに、低空を低速で飛べるプロペラ機のため、敵軍のレーダーに見つかりにくいという大きな利点があるのです」(同・軍事ジャーナリスト)

アメリカの本音

 アメリカ空軍は一度、採用を保留と決定した。だが、同盟国などに低コストで支援できるため、少数の機体を採用した。

「AT-6Eこそウクライナ空軍の支援にぴったりでしょう。練習機ですから、ウクライナ空軍のパイロットなら誰でも操縦できます。生産においても運用においてもコストは格安ですし、爆弾を満載すれば侮れない攻撃力を発揮します。地上を戦車レオパルト2が進撃する際、空中からロシア軍を攻撃し、支援することが可能です」(同・軍事ジャーナリスト)

 F-15やF-16、攻撃ヘリのアパッチの攻撃力は極めて高いものの、撃墜されると乗組員が全滅するリスクも高い。

「AT-6Eは低空を低速で飛行しますから、パラシュートで脱出できる確率が上がります。ウクライナ国内で戦争をしているため、自国民に保護されることも期待できます。こんなことはアメリカもとっくに分かっていて、もし本気ならAT-6Eを大急ぎで増産し、ウクライナに供与しているでしょう。それが行われていないということから、アメリカはウクライナ軍にロシア軍を殲滅してほしいわけではないのが分かります」(同・軍事ジャーナリスト)

 結局、アメリカがF-16の供与を決定したのは、ウクライナが戦争に勝つためではない。停戦後を見据えてのことだという。

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