ウクライナ空軍に必要なのは小型攻撃機「AT-6E」 バイデンはなぜ今さら「F-16」の供与を認めたのか
S300型地対空ミサイル
反攻作戦は「早ければ5月」とか「今夏」と報じられているが、F-16の本格投入は「今年末か来年夏」と伝えられている。
「大前提として、戦車の進撃には航空戦力と歩兵の支援が不可欠です。早ければ5月とも報じられた反攻作戦がいまだに開始されていないのは、供与を受けた戦車レオパルト2が高性能だとはいえ、丸裸で投入すれば甚大な被害を受ける可能性があるからでしょう。F-16の供与を待って反攻することも理論的には可能ですが、作戦の延期にも大きな問題があります」(同・軍事ジャーナリスト)
ウクライナは「全領土の奪還」を公言している。激戦が続く東部だけでなく、2014年にロシアが実質的に占領した南部のクリミア半島などを取り戻さない限り、停戦交渉には応じないという姿勢だ。
一方、ロシアにとってクリミア半島の実質占領は、これまでで唯一の戦果だ。駐留するロシア軍には死守が命じられ、様々な防御陣を構築していると報じられている。
「冷戦時代、ソ連は空軍力ではNATO(北大西洋条約機構)に勝てないと判断し、地対空ミサイルなど対空兵器に力を入れてきました。ロシア軍のS300型地対空ミサイルは、今も大量に備蓄されていることをウクライナも認めています。反攻作戦を延期すれば、ロシア側に対空防御を構築する時間を与えてしまいます。来年、戦車とF-16でロシアに攻め込んでも、F-16がS300で返り討ちに遭う可能性は否定できません」(同・軍事ジャーナリスト)
ユーロファイター
ロシア軍を撃破し、クリミア半島を奪還するには、何よりも戦闘機が必要──そんなことは、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領(45)も百も承知だ。
昨年2月にロシア軍の急襲を受けた時から、一貫してNATO加盟国に戦闘機の供与を懇願し続けた。だが、アメリカは拒否の姿勢を崩さなかった。
「売却された戦闘機や戦車を第三国に引き渡す際には、製造国の許可が必要です。アメリカが友好国にF-16を売却したとして、政権交代で方針が変わり、F-16を北朝鮮に売るようなことが起きると大問題です。ゼレンスキー大統領がいくら依頼しても、ジョー・バイデン大統領(80)は首を縦に振りませんでした。そのためウクライナ政府は、戦闘機ユーロファイターの供与を求めて動いたのです」(同・軍事ジャーナリスト)
ユーロファイターはイギリス、ドイツ、イタリア、スペインの4カ国で共同開発したため、供与の際にアメリカの許可を必要としない。しかも、F-16と同じ多用途戦闘機だ。
「昨年の早い段階でユーロファイターの供与が決定していたら、パイロットの訓練も間に合ったでしょう。今、ユーロファイターがロシア軍を空から攻撃していたら、まさにゲームチェンジャーになったかもしれません。しかし、供与が実現することはなく、F-16と同じように反攻作戦には間に合いませんでした」(同・軍事ジャーナリスト)
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