ウクライナ空軍に必要なのは小型攻撃機「AT-6E」 バイデンはなぜ今さら「F-16」の供与を認めたのか
AFP=時事は5月20日、「バイデン氏、ウクライナへのF16供与を支持 G7で表明」の記事を配信、YAHOO!ニュースのトピックスに転載された。識者はウクライナ軍の戦力が格段にアップすると指摘し、ネット上にはロシア軍への大規模反攻作戦が始まるのではないかと期待する投稿が目立った。
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ところが、アメリカのフランク・ケンドール空軍長官は22日、「ウクライナにとって必要で、助けにもなる」とF-16の実力を認めながらも、「ゲームチェンジャーではない」と安易なウクライナ勝利論に釘を指した(註)。
なぜケンドール長官は戦況が劇的に変化することはないと明言したのだろうか。軍事ジャーナリストは「F-16が極めて優れた戦闘機であることは間違いありません」と言う。
「イーグルの愛称で知られるF-15戦闘機の初飛行は1972年です。ところが、開発を進めている時点から、生産・運用コストの高さが問題視されていました。そこでアメリカ国防省は『それなりに安く、何でもできるお得な戦闘機』も並行して開発し、それがF-16戦闘機だったのです。価格を見ると、F-15は安いものでも1機40億円くらい。一方、F-16は1機20億円くらいで調達することができます」
F-15は「制空戦闘機」と呼ばれ、敵機を殲滅して自軍の航空優勢を確保することが主な任務だ。実戦経験も豊富だが、今のところ公式の撃墜記録は存在しない。まさにF-15は無敵の戦闘機だと言える。
困難な反攻作戦
「一方のF-16は『多用途戦闘機』と呼ばれます。バルカン砲や空対空ミサイルを積んで敵機を迎撃することも、爆弾を積んで敵戦車や敵基地を爆撃することも可能です。安い戦闘機と聞くと“安かろう悪かろう”と思われがちですが、F-16は設計当初から最新技術を取り入れ、問題が発生するたびに改良を続けてきました。おまけに実戦経験も豊富です」(同・軍事ジャーナリスト)
最新鋭のF-35戦闘機に至っては、安いタイプでも1機100億円を超えてしまう。F-35やF-15がフェラーリやポルシェだとすれば、F-16は高性能で安価な日本車だ。
「世界20カ国以上の空軍が正式採用し、5000機を超える機体が製造されました。“戦闘機界のベストセラー”という異名もあります。極端な話、複数のF-16を購入すれば攻撃機を買う必要はありません。コストパフォーマンスは抜群で、アメリカからの供与の決定にウクライナ側が大喜びしたのも当然と言えるでしょう」(同・軍事ジャーナリスト)
これほど評価が高い戦闘機にもかかわらず、アメリカは「F-16がロシア軍を蹴散らし、ウクライナ軍が大勝利することは起きない」と言明した。
「F-16の供与が反攻作戦に間に合わないからでしょう。ウクライナ空軍のパイロットがアメリカで訓練を開始していると報じたメディアもありましたが、F-16の操縦を習得し、実戦に耐えられるだけの技量を身につけるとなると、相当な時間が必要です。その上、戦闘機を動かすのはパイロットだけではありません。整備員を筆頭に地上スタッフの教育も実施しなければなりません」(同・軍事ジャーナリスト)
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