メジャーに挑戦した多くの日本人野手が苦労したのに…レッドソックス「吉田正尚」の大活躍を裏付ける“あるデータ”とは
日本時間の5月23日、レッドソックスの吉田正尚(29)はエンゼルスの大谷翔平(28)と“侍対決”に臨んだ。吉田は2番レフト、大谷は3番DHで共に先発出場。その結果を日本のメディアはテレビ局を中心に「対決を制したのは吉田」と伝えた。
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吉田は4打数2安打1打点、大谷は3打数ノーヒットだった。この対決が象徴するように、最近の吉田は好調が続いている。
5月24日現在、打率は3割、本塁打は6本、出塁率は3割7分6厘、得点圏打率は3割1分8厘──まさに勝負強さが数字に表れている。
MLB評論家の友成那智氏は、開幕前から吉田の活躍を予想していた一人だ。改めて話を聞いた。
「日本のプロ野球では不用意な三振を戒める伝統がありますが、MLBも最近になってようやく、チームの三振数を減らす効果に気づき始めました。レッドソックスは2000年代に活躍したマニー・ラミレス(50)が通算本塁打555本を記録したのを筆頭に、ホームラン狙いでぶんぶん振り回す打者が多いチームというイメージがあるかもしれません。しかし、それは間違いです。むしろ打線のつながりを重視し、1番から4番まで出塁率の高い選手を並べることを好むチームなのです」
一昨年と昨年のチーム成績を振り返ってみよう。
2021年のレッドソックスは、92勝70敗でアメリカンリーグ東地区の2位だった。しかしポストシーズンはワイルドカードゲームを制し、ディビジョンシリーズでレイズを3勝1敗で撃破。3年ぶりのリーグチャンピオンシップシリーズの進出を決めた。
三振の数
リーグチャンピオンシップシリーズではアストロズと対戦したが、2勝4敗で敗退し、ワールドシリーズの出場は阻まれた。
無念のシーズンだったが、言うまでもなく強いチームだった。打撃陣の出塁率を見ると、規定打数以上の打者8人のうちなんと7人が3割台だ。
まさに“つなぐ野球”が実践されていたことが分かる。ちなみに8人のうち最高出塁率は、ラファエル・デバース(26)の3割5分2厘だった。
ところが2022年シーズンは、78勝84敗でアメリカンリーグ東地区5位と低迷した。同じように打撃陣を見ると、そもそも規定打数に到達した打者が4人しかいない。
その4人の出塁率はさすがに全員が3割台だったが、21年シーズンと比べるとレギュラー陣の交代が激しく、打線の“つながり”という点で見劣りしたことも一目瞭然だ。
「特に22年シーズンは、頼りになる1番バッターが定着しませんでした。レッドソックスは出塁率にこだわって選手を探し、そこで見つけたのが吉田でした。オリックス時代の吉田は、通算7年で打率3割2分7厘、本塁打133本という記録を残しました。しかしレッドソックスが注目したのは、4割2分1厘という高い出塁率と三振が300個と極めて少ないことでした」(同・友成氏)
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