ファームで好調、中日・根尾昂投手はなぜ1軍に上がれないのか

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投手陣を発奮させる「起爆剤」

 天才は忘れたころにやってくる? 昨季、“投手一本”に正式転向した5年目の中日・根尾昂(23)のことである。

 中日ドラゴンズの自力優勝の目が早くもなくなりそうである。5月23日の広島戦で勝利し、8連敗を免れたものの、翌日はまた負け。「借金14」は12球団最多(24日現在)。リーグ首位を争っている対DeNA戦にいたっては、まだ1勝も挙げていない(0勝6敗)。

 ペナントレースが100試合以上残っている段階で、苦手チームを作ってしまったのも痛手だが、中日の地元メディア関係者は20、21日の巨人戦での連敗は、チームに大きなダメージを与えるのではないかと危惧する。

「5月20日の巨人戦は開幕投手も務めた小笠原慎之介(26)で、翌21日は高橋宏斗(20)が先発したのに敗れました。立浪竜の2枚看板を立てて1勝もできませんでした。7連敗中の打線を見てみると、3番の細川成也(24)が28打数10安打の打率3割5分7厘、4番・石川昂弥(21)も打率3割3分3厘、打点6を稼いでいます。打線のつながりもイマイチですが、投手全体が与えた四球数はリーグワーストの『128』(同時点)。投手陣にバッターに対する積極的な攻めの姿勢が出てこないとダメでしょう」

 投手陣を発奮させる起爆剤が必要なのだという。そんなチーム状況に合わせて聞こえてきたのが、根尾のファームでの好投である。しかし、どういうわけか、本人の一軍昇格の話が出てこない。

「18日の阪神二軍との試合でリリーフ登板しました。直球で2者連続三振に斬って落とし、球速も150キロを超えていました。三振を奪った相手は森下翔太(22)と井上広大(21)。阪神・岡田彰布監督(65)が期待する好打者たちです。森下なんか、『一軍でまた対戦することがあれば…』と、悔しがっていましたよ」(阪神担当記者)

 前日17日の同カードでも「イニングまたぎ」でゼロに抑えている。中日・片岡篤史二軍監督(53)も手放しで褒めていた。

 根尾はここまでファーム戦12試合に登板して、防御率3.00。奪三振10、勝敗はリリーフなのでついていないが、のべ49人の打者と対戦。打たれたヒット数はわずか5本。ファームの投手の中では頭一つ、抜けた存在となっている。

 それでも、立浪和義監督(53)から昇格のゴーサインが出ないのは「立ち位置」が定まらないからのようだ。

先発かリリーフか

「昨秋キャンプから、根尾は先発ローテーション入りを目標にしていました。でも、今春キャンプ中盤から制球を乱すなどのボロが出て、いつの間にか、ファームではリリーフに戻っていました。だったら、先発の調整なんかやらせないで、リリーフのままにしておけば良かったんです」(前出・地元メディア関係者)

 そもそも、根尾の「投手転向」が決まったのは、昨年5月のこと。プロ4年目で初の開幕一軍のキップを掴んだが、出場機会に恵まれず、ファーム降格となったばかりだった。

「前イニングの守備ではショートを守っていました。攻守交替でベンチに帰ってくると、キャッチボールを始め、そのままマウンドに向かいました。2アウトを取ったところでまたショートの守備に就いたのです」(前出・同)

 ちなみに同年は「外野手」でスタートしている。それが4月21日に登録を「内野手」に戻し、その直後の投手デビューだった。

 根尾が中日入りした当時を知るチーム関係者がこう言う。

「根尾をドラフトで引き当てたのは、前任監督の与田剛氏(57)。根尾は大阪桐蔭高校時代は投手、内野、外野をこなすスター選手でした。プロでは内野手一本でやっていく予定でしたが、『投手・根尾』を惜しむ声も出ていたんです。4季連続で甲子園に出場したピッチャーですからね。1年目のキャンプ中、与田監督(当時)が『ちょっと投げてみろ』とこっそり呼び出して、室内練習場のブルペンで投げさせてみたんです」

 そのときの評価だが、与田監督と阿波野秀幸投手コーチ(58=現巨人)は「野手投げ。本格的な投手の投げるボールではない」。しかし、村上隆行打撃コーチ(57=当時)など複数のコーチたちは「イケるんじゃないの?」と“合格点”を出していたそうだ。

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