米国は「格差社会」どころか「総貧困社会」に? 多くの国民は既に景気後退の痛みを感じている
「給料ギリギリの生活をしているZ世代の成人」は65.5%
今回も景気が減速し始めると、過去と同様、いやそれ以上に、少しでも安い商品を購入するようになっており、低価格を売りにした店舗は活況を呈している。その代表格は徹底した低価格戦略で知られる米小売り大手ウォルマートだ。今年2~4月期決算は前年比8%の増収となっている。
多くの米国人が「生活防衛」に走る傾向が鮮明になっているが、必死の努力にもかかわらず、彼らを取り巻く状況は悪化するばかりだ。
ブルームバーグが4月26日から5月8日にかけて調査した結果によれば、日々の生活費の捻出が困難となった米国の成人の数は8910万人に達した。その比率も38.5%と記録的な水準となっている。
特に深刻なのは若年層だ。
米フィンテック企業レンデイングクラブが米フィンテック情報企業PYMNTSと提携して毎月実施している調査では、今年3月時点で「給料ギリギリの生活をしているZ世代の成人(26歳以下)」が65.5%に上ることが分かった。これを伝えたブルームバーグ(5月1日付)は、「Z世代はキャリアをスタートさせたばかりで賃金が相対的に低く、負債の割合が大きい傾向にある」と解説している。
新型コロナのパンデミックのピーク時に2.1兆ドルに達していた家計の貯蓄超過はその大半が消失してしまった。「足元の超過分(約5000億ドル)も年末までになくなってしまう」と予測されている(5月9日付ロイター)が、債務上限問題で与野党が対立していることから、家計に対するさらなる財政支援は期待できない。
前述のブルームバーグの調査では、2500万人以上の米国人がクレジットカード・ローンに依存していることも明らかになっている。
生活費の不足を補填するために不可欠となったクレジットカード・ローンだが、長引くインフレや金利上昇のせいで延滞率が急上昇している。
ニューヨーク連銀が5月15日に発表した四半期報告書によれば、今年第1四半期に深刻な延滞に移行した割合は4.57%となり、昨年第4四半期から0.56ポイント上昇した。増加幅は2009年第2四半期以来、14年ぶりの大きさだ。
米地銀の相次ぐ破綻で金融機関は消費者融資に対しても慎重な姿勢を取り始めており、生活費を捻出できない米国人がさらに増加することは確実な情勢だ。
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