これから観始めても遅くない「春ドラマ」3選 異質ぶりが際立つ「教場0」と海外刑事ドラマの共通点

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 プライム帯(午後7時~11時)に16本ある春ドラマが中盤に入った。その中から現時点までの秀作ドラマ3本を決めたい。これから観始めても遅くない。

フジテレビ「風間公親-教場0-」(月曜午後9時)

 説明するまでもなく主演は木村拓哉(50)。スペシャルドラマ版の「教場」(2020年)、「教場II」(2021年)は警察学校内の群像劇だったが、この作品の舞台は殺人を扱う捜査1課。木村が扮する刑事指導官・風間公親が新米刑事を厳しく鍛えている。

 まず買えるのは構成。刑事同士の恋愛、居酒屋での一杯などがないので、捜査が存分に堪能できる。海外の刑事ドラマと同じである。「トリックがおかしい」といった指摘があるが、現在放送中の作品も含め、ほかの刑事ドラマは捜査自体が破綻しているものばかりだ。

 例えば、現在放送中のドラマはメールが捜査の大きなポイントの1つでありながら、送信元を調べなかった。一方でSNSは調べた。ちぐはぐだった。メールの送信元を調べると、犯人が早々と分かってしまい、物語が成立しないからだった。

 だが、ドラマなので視聴者との間で暗黙の了解があったら、真実性は度外視してもいい。そういう作風なのだ。一方、「教場0」はほとんど存在しないリアリスティックな刑事ドラマ。そこも評価できる。リアリティに拘るのは海外の刑事ドラマなら常識だ。

 奇抜なトリックはミステリー小説やドラマの醍醐味と捉えるべきないか。乗客全員が犯人だった「オリエント急行の殺人」や奇想天外な密室殺人が仕組まれた「本陣殺人事件」などが典型例である。こんなトリック、実際には使われるはずがない。ただし、不可能ではない。それが小説、ドラマのトリックだ。

 作り込まれた映像もレベルが高い。極めつけは第6話で新米刑事・遠野章宏(北村匠海・25)が千枚通しで刺されたシーン。遠野が犯人を追い、見失ったと思ったら、背後にいた。直後に首などを何度も刺され、血が噴き出した。遠野が持っていたビニール傘は真っ赤に染まった。

 近年、めっきり珍しくなったハードボイルドタッチであるところも買いたい。刑事ドラマは常時3、4本あるのだから、さまざまなタイプの作品があったほうが視聴者のためになるが、ほのぼのした作品ばかり。この作品の異質ぶりは際立っている。

 今後も見どころは多い。遠野は殉職してしまうのか。その場合、風間と彼の影の相棒・柳沢浩二(坂口憲二・47)らは犯人(森山未來・38)を地の果てまで追う。警察組織はサツカン(刑事、警察官)殺しを絶対に許さない。これは世界共通である。

 第7話から登場した鐘羅路子(白石麻衣・30)の退職は避けられないはず。西田徹(渋谷謙人・35)に頼まれ、薬物の捜査情報を不正に得てしまった。鐘羅がろくでなしの恋人・西田にこの情報を漏らしたら、地方公務員法違反(守秘義務違反)で犯罪だ。仮に漏らさなくても情報を不正入手した時点で厳罰は免れない。こんな想像が膨らむのもリアルな作風だからである。

 後半のカギを握るのは木村の演技にほかならない。風間のキャラクターは刑事指導官時代と警察学校時代では違う。警察学校ではより厳しくなる。

 風間の心象風景にどんな変化が起きるのか。木村はそれを細密に表さなくてはならない。

 視聴率についても付記しておきたい。正確なデータが出ないことから3年前からテレビ界が使わなくなった世帯視聴率だが、その数字が問われているようなので、あえて世帯視聴率で書きたい。「教場0」の7話までの世帯視聴率は全ドラマの中で2位。T層(13~19歳)とF1(女性20~34歳)の個人視聴率はトップである。

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