人口増加率6年連続トップ「流山市」は何がスゴい? 新設中学校の校則が全廃に
空気を読まない市長
藻谷 そういう時、流山のキーパーソンである井崎義治市長はどうするんですか?
大西 市長は米国の大学院で地理学の修士課程を修了した都市計画のプロで、移住した流山が無思慮な開発で壊されるのを見かねて2003年、市長になった人です。普通の政治家と違って相当空気を読まない人ですから、既成勢力の言い分をそのまま聞くということはないですね。自分の頭で正しいと判断したロジックを選びます。
藻谷 市長は今60代後半ですが、その年齢にしては極めて珍しいグローカルな人ですものね。アメリカで都市計画コンサルタントをやっていた時も、普通にローカルとグローバルなことを同時進行させていて、しかしナショナルなことはやったことがない。そういうお母さんたちを呼び寄せる匂いを、本来的に持っている人なんでしょうね。
二つの基本的な欲求に応える
――岸田政権の少子化対策についてはどうお考えでしょう。
藻谷 いま0~4歳の乳幼児の数が増えている市町村は、流山を含めて全国に100少々あります。1700の中で100しかないという言い方もできますが。その半分は、「消滅する」というレッテルを勝手に貼られた過疎の農山漁村です。
都市部でも過疎地でも、そうした市町村に共通しているのは、「子供を産み育てながら仕事もする」ことが、周囲に支えられつつ当たり 前にできるということです。
普通に働きながら子供も産み育てたいのに、諸事情でどちらかをあきらめさせられるというのは、そもそも人権侵害なのです。人権を最大限守るのは、地域としても自治体としても当然のこと。人口増だの経済活性化だのは、その先にくっついてくる結果にすぎません。
働きたいし、子育てもしたい。この二つの、人間の基本的な欲求に同時に応える努力をすると、人口は増える。それを証明したのが流山ということなのではないでしょうか。
大西 4月の統一地方選で、井崎市長は6選を果たしましたが、市長選には他に2人が立候補し、市議選には定員28人に対して37人が立候補しました。
地方選は対立候補者が出て来ず無投票になる例が少なくない中、流山市は「俺にやらせろ」「私にもやらせて」とまさに「すごい」ことになっています。
市民と市政にある程度の覚悟があれば、こんな状況が生まれるわけで、流山でここまでできたのだから、他の自治体でも少子化についてあきらめるのはまだ早いと思います。
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