人口増加率6年連続トップ「流山市」は何がスゴい? 新設中学校の校則が全廃に
安い金額で豊かな時間を過ごすことができるロンドン
藻谷 それがまさに20世紀と21世紀の決定的な違いですね。黙って座って街を消費しなさい、出来上がったインフラを享受しなさいという段階は20世紀で終わっているのに、供給側のマインドが古いままだから、街が面白くならない。
大西 私がロンドンに住んでいる4年間で学んだのは、大英帝国時代からのストックのすさまじさですね。公でもプライベートでもない「コモン」と呼ばれる広大な野原があって、週末になると人々が三々五々集まってくる。それでその横でオーケストラが「魔笛」をやっているんです。かかるのは安ワインの代金くらいで、何とも豊かな時間を過ごすことができる。
それに対して日本で行われている、ショッピングセンターで思いっきり買い物をするとか、休みの日にパチンコをするとかいう、フロー型の時間の過ごし方というのはどこか貧しい。ロンドンの例は藻谷さんが提唱している「里山資本主義」と共通点があると思うんです。
藻谷 先日、ジョージアやアルメニアというヨーロッパの最貧国に行ってきたんですが、街頭にはゆったり今を楽しんでいる人たちが溢れていました。日本にも、人々が街でゆっくりと楽しく時間を過ごして、それぞれを認め合うという時代はいつか来るんでしょうかねえ。
新設中学の校則を全廃
大西 話を流山に戻すと、これまでバリバリと働いてきて、しかもグローバルなことも知っているお母さんたちが集まってきて何が起きたかというと、中学校の校則がなくなりました。
藻谷 ほう!
大西 そういうお母さんたちの価値観からすると、前髪が目にかかっちゃダメとか、スカートがひざ上何センチとか、そういう校則は何の意味があるんだ、それは何のためにやっているんだ、ということになるわけです。で、教育委員会を説き伏せて、新設中学の校則を全廃してしまったんです。
藻谷 大変に良いことですね。社会には存在しない、学校の中だけにしかない規則をとにかく守れというだけでは、自主・自律の精神は育たない。
大西 そういうことを言えて、教育委員会を動かせちゃうお母さんたちはすごいですよ。
藻谷 元々いた地元の人たちからすると、よそからすごい人たちが集まってきちゃったなあ、という感じでしょうか(笑)。
大西 もちろん抵抗勢力があるわけです。「静かな流山を返してほしい」とか。
でもお母さんたちはめちゃくちゃ戦闘力が高いんですよ。「静かなままじゃ財政が破綻しちゃうでしょ」とディベートでも負けないし、必要なデータはすぐ集めてくる。世界の学校は今、北欧ではこうなっているとか、調べてくる。
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