人口増加率6年連続トップ「流山市」は何がスゴい? 新設中学校の校則が全廃に
世界屈指の企業も進出
大西 自治体の側からみると、子育ての期間というのは、ナショナルな人たちを地元に振り向かせるチャンスなんですよね。だから子育てだけじゃなくて、今まではバリバリやってきたんだから、ここでもその能力を生かしてよ、というようなオファーをすると、とてつもない能力を発揮する。本当にローカルでグローバルとつながっていくような仕事を作ったりするんです。
藻谷 流山には世界的な物流不動産企業のGLPが巨大倉庫を造っているわけですが、土地が余っていて交通の便が良いというだけではなく、優秀な働き手がいるという気配を感じ取っていたんじゃないのかな。
二子玉川の開発で有名な高島屋系列の東神開発にしても、デベロッパーの入札があったころは雑木林と田んぼだらけだった流山に進出するというのは相当な決断ですが、子育て世代の人材が集まる流山の将来性を感じていたのかも。
大西 江戸川の河川敷に巨大倉庫群があって、その中にAmazon、楽天、ヤマト運輸、佐川急便が入っていて、そのライトが光っている……。なかなかの絵ですよ。
藻谷 流山市が「敷地の2割の緑化」など、厳しい条件を志高く求めていたからこそ、安手の流通団地にならず、GLPのような世界屈指の企業にも選ばれる結果になったのでしょうね。
流山はシムシティ
藻谷 実は私、千葉県の新浦安の住民だったんです。1982年、東京ディズニーランド開業の前の年、まだ京葉線が通っていないころに両親が家を買って、大学時代から10年近く住んでいました。それで『流山がすごい』も、浦安と対比しながら読んだわけです。
88年に新浦安駅が開業しますが、やがて駅前にはダイエーとファッションモール、ちょっと離れたところにイトーヨーカドーもできた。都心以外でショッピングセンターが複数できるまれな例でした。
人口は激増して、ディズニーランド需要でホテルも林立。明海大学は不動産学部で有名になったし、墓地公園も最初から造っていた。さらに順天堂大学病院を誘致。図書館もすごく立派で、40年前に既に知的なマダム層を引き付けていました。
それでも結局、浦安は流山にはなれなかった。どこまでもベッドタウンなんです。高学歴女性が働くことは想定されず、あるのは「奥様が楽しく過ごせるように」という発想だけ。多摩田園都市もそうですね。
大西 なるほど。市民は帰って寝るだけ。あとは消費者になるだけということですね。
藻谷 住んでいる人の中にはキャリアウーマンも多かったんですが、そういう層がまちづくりに参加する仕組みになっていないわけですね。こう説明しても、「寝に帰って、消費するだけで何が悪いの?」という人もいるんですが、そういう人には『流山がすごい』を3回繰り返して読んで、よく考えろ、と言いたい(笑)。
大西 本の中で、流山はシムシティのようだ、という市民の声を紹介しました。シムシティは、かつて世界中で大ヒットした、仮想の街で道路や発電所を造るパソコンゲームです。やはり今の流山には、自分たちの街を自分たちでつくっていく、という雰囲気があるんですよ。
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