1時間座っているだけで余命が22分削られる?  日本人は世界一「座りすぎ」専門家が指摘

ドクター新潮 ライフ

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1日2時間メール

 座位を長時間続けない。そのために、海外ではスタンディングデスクを活用し、立ったままパソコンのキーボードを打って仕事をする職場が珍しくなくなっています。日本の企業でもスタンディングデスクを導入している職場が増え始めていて、私の研究室でも多くの人が立ったままパソコンに向き合っています。

 長い文章を書く時などは座ったほうが集中できるかもしれません。私自身、やはり論文などを書く時は座って作業することのほうが多い。しかし、それほど集中しなくてもいい作業まで、本当に座ってしなくてはいけないのでしょうか。

 日本ビジネスメール協会の調査(17年)によると、日本のビジネスマンは平均して1日に39.3通のメールを受信し、12.6通のメールを送信している。そして、メールを読むのにだいたい1分、書くのに6分かかり、総合すると送受信のために1日115分、ほぼ2時間を費やしていることになるそうです。

 この2時間、多くの人は座ったままでデスク上のパソコンと対峙していることでしょう。しかし、本当にメールは座って打つ必要があるのでしょうか。メールくらい立って読み書きしてもよいのではないでしょうか。

人間は怠惰な生き物

 とはいえ、みんなが座って仕事をしているなかで、ひとりだけ立って作業していれば白眼視されてしまうでしょう。したがって職場全体、特に経営陣が座位に対する意識を持つ必要があります。従業員の健康を考えた「健康経営」の観点から考えれば、「脱・座りすぎ」への環境整備、設備投資は決して無駄ではないはずです。

 従業員が肉体的な健康を損なうのは企業にとっても損失でしょう。また、座りすぎの弊害によって種々の症状が出るのは今より少し先であり、勤めを終えた老後かもしれないとしても、適度に座位を中断することで得られるのは将来のメリットに限りません。作業している際に立つことで集中力が途切れてしまうと思われがちですが、そんなことはなく、仕事の効率が下がるわけではないという研究も進んでいます。マラソンでスタートから飛ばしても、35キロを過ぎたあたりでバテてしまうように、仕事も根をつめて続けると結局は生産性が下がる。その意味でも、座りすぎは解消すべき課題だと私は考えています。

 ここからは、現実的な「脱・座りすぎ策」を考える上で、まずはあえて「画餅の提案」をしてみたいと思います。座りすぎによる健康被害を考えると、家庭でも座りすぎは避けたほうがいいことになります。例えばリモコンは使わずにテレビのところまで歩いていってチャンネルを替える。あるいは、DVDで2時間の映画を見る時でも、わざと家事を残しておいて30分に1回はその家事をこなすために立つように心掛ける。「理想」だとは思います。

 しかし、人間は怠惰な生き物です。せめて家にいる時くらいリラックスしたいと考えるのは当然です。私だって家ではくつろぎたい。実現できそうもない提案をしてもほとんど意味はないでしょう。

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