1時間座っているだけで余命が22分削られる? 日本人は世界一「座りすぎ」専門家が指摘
座ること自体は問題ではない
そして2000年ごろに、さらなるパラダイムシフトが起きます。エクササイズもフィジカル・アクティビティーも大いに結構。しかし、それ以外の時間、私たちは座っている、つまり座位行動をしているが、これをどう評価するかという問題意識が生まれ始めたのです。
その結果、エクササイズやフィジカル・アクティビティー以外の座位時間も、さらに最近では睡眠時間も含め、24時間トータルで健康を捉えようという動きが広がってきています。
そして、やはり世界五大医学誌のひとつである「JAMA」に、テレビ視聴時間が長ければ長いほど糖尿病になりやすいといった内容の論文が掲載され、一気に座位研究への関心が高まりました。00年ごろに世界で発表された座位行動研究に関する論文の数は20程度に過ぎませんでしたが、20年には2千を超えるほど、目覚ましく研究が進んでいったのです。
ここまで「座りすぎ」に関する歴史を振り返りましたが、座りすぎによる弊害の事実を知ると、とりわけ真面目な日本人の中には誤解する方が少なからずいます。「そうか、座ってはいけないのか」と。そうではありません。いけないのはあくまで「座りすぎ」です。したがって、座位の状態を長く継続しないことが重要になります。当然ですが、立ち続ける必要はありません。
30分に1度立ち上がる
具体的には、30分座ったら数分は立って座位状態にブレークを挟む。トイレ休憩に立つのでもいいですし、まさにコーヒーブレークのために職場の給湯室まで行くのでも構いません。あるいは、30分座ったら資料をコピーするために立つと決めておくのでもいいでしょう。とにかく、70%の筋肉が集まっている下半身を圧迫状態から解放し、血流を良くする。何も「運動」する必要はなく、数分立って少し動くだけでもかなりの効果が望めるのです。
事実、こんな実験結果があります。30分座っていた後に3分間、座位を中断し、軽く歩くような低強度といわれる活動と、より速くスタスタと歩いたりするような中高強度の活動をした場合とを比較すると、糖尿病に関係する食後血糖値やインシュリン抵抗性の改善度合いはほとんど変わらなかった。
つまり、デスクワークを中断して激しい運動をしなくても、30分に1回、立ってちょっと物を取りに行くといった程度の行動を数分するだけで、座りすぎによる弊害は十分に解消できるわけです。
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