1時間座っているだけで余命が22分削られる? 日本人は世界一「座りすぎ」専門家が指摘
動け、走れ、鍛えろ。人生100年時代、健康長寿実現のためにわれらに休む暇はない。とはいえ、マジメにフィットネスに励めるほど意志が強いわけでもなく……。だが、より身近な生活動作にも長寿の鍵は隠されていた。データに基づく「脱・座りすぎ」のススメ。【岡 浩一朗/早稲田大学スポーツ科学学術員教授】
***
ニュートラルギアのままアクセルを踏んでエンジンを空ぶかしする。なんて無意味でもったいないことをするのか――。
環境問題に対する意識の高まりもあって、空ぶかしが「悪」であるという認識はもはや常識になっていると思います。にもかかわらず、私たちは日常生活において“盛大な空ぶかし”を放置しています。
健康を維持するためには、何をおいても体に血液を遍(あまね)く行き渡らせなければなりません。しかし、私たちはある姿勢を続けることでそれを阻害しています。太ももの裏が押され、膝は折れたままの状態で、鼠径部(そけいぶ)も圧迫される。
これではいくら血流を良くしたくても、体のあちこちに自ら障害物を作っているのに等しく、人体のポンプでありエンジンともいえる心臓がどれだけ頑張ったところで意味がない。言ってみれば、体全体で空ぶかしをしているようなものです。しかも、無意識にその姿勢を長時間とり続けています。
1カ月で11時間余命が減少?
座位。私たちは座りすぎによって、健康を損なっているのです。実際、座りすぎ研究の先進国であるオーストラリアの研究機関はこう報告しています。
1時間座りっぱなしでテレビを見続けると余命が22分短くなる――。1カ月だと「22分×30」で660分。1カ月で実に11時間、私たちは自ら命を削っているのです。
〈こう解説するのは、座りすぎに関する著作がある早稲田大学スポーツ科学学術院の岡浩一朗教授(健康行動科学)だ。
大いに羽を伸ばした黄金週間が過ぎ去り、われわれはまた日常への回帰を強いられている。観光に食べ歩きにスポーツ。休日を利用して余暇をアクティブに満喫する生活ではなく、職場や家庭での「いつもの生活」に戻りつつあるわけだが、そこに待ち構えているのが「座位」である。デスクワークにカウチポテト。われわれの日常には、至るところに「座りすぎ」のわなが潜んでいる。〉
[1/6ページ]