「ダイコク」“返品7.5億円”事件はなぜ起きたのか……ドラッグストア業界にはびこる「ゆるすぎる商慣習」

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返品不可のメーカーも

 先の化粧品メーカー関係者は取り引きがないためデータがなかったが、コンビニエンスストアの状況はどうか。元ローソンでマーケティングアナリストの渡辺広明氏は「コンビニでもドラッグストアレベルのような慣例はないですね。一部の季節商品などで返品はありますが、基本的には、きちんと返品契約または商談リストなど約定書として文章で残しています」という。

「ですので、コンビニの日用品の棚をよく見ると、なかなか売れなくてホコリをかぶっている洗剤などが置かれていることがあります。モノによってはパッケージが変色してしまったりも……。これこそ返品ができない証拠で、ドラッグストアではこんな“劣化”した商品を見る機会はそう多くないのでは。『見切り品』として、石鹸や美容品を値引き販売しているコンビニもあります。これもまた、返品ができないゆえに、お店が泣く泣くとっている施策なのです」(渡辺氏)

 こうしたコンビニの「見切り品」同様、一部にはアウトレットで安く販売するコーナーを設けているドラッグストアもあるにはある。これまでの話を総合すると、値引きせずに返品してしまえばいいはずだが……。先のメーカー関係者はこんな内情を説明する。

「そこもまた業界の“闇”ともいえるのですが、一部のメーカーはドラッグストアも返品できないのです。具体的には、日本のドラッグストアの常識が通用しないP&Gやユニリーバなどの外資系、ドラッグストアも逆らえない超有力な商品を持つDHCなどですね。この辺は個々のチェーンの契約の事情もあるので一概には言い切れませんが、こういったメーカーの商品は返品ができないため、こっそりと値引き販売されていることもあるにはあります」

 会社名によって返品の可・不可が黙認されているとなれば、メーカー側としても不公平感は強いだろう。

「ただ、われわれとしても“もちつもたれつ”という部分があるのも正直なところ。たとえば、年度末までに売上目標が達成できないようなときに、ドラッグストアさんに無理をいって仕入れてもらい、見せかけだけでも数字をごまかすことがある。で、あとから返品してもらうんです。これは“押し込み”といいます。たとえば仕入れのときに30円の特別納入価だとすると、二か月後に返品するときは通常の納入価の50円で戻す。そんな悪質なケースも一部あります。ドラッグストアさんにしてみれば、仕入れて返品するだけで儲かるのです」

 とはいえ売上目標達成のために生じるコストも、当然、商品に上乗せされる。やはり消費者の立場からは容認できるものではない。

協会も頭を抱える

 先の渡辺氏は、ドラッグストアの返品問題に別の観点から厳しい見方を示す。

「まず、他の小売業と比較してフェアなビジネスではありません。また、返品の常態化は廃棄を増やすことにつながっており、SDGsの観点からも問題があります。なにより返品が可能な前提になっていると、とりあえずお店には仕入れてはもらえるわけで、メーカー側にも緊張感が生まれません。モノづくりを疲弊させるともいえます」

 日本チェーンドラッグストア協会にとっても、返品は悩ましい問題のようだ。本件についての見解を尋ねると、

「各社の取り引きについて中身まで把握はしていませんが、昔からの商習慣として『返品』があったのは事実です。取り扱い品目や量が多いために、ほかの業態に比べて返品率は高いと認識しています。ただし、それを良しとしているつもりはまったくありません。協会としても取り組んでいますし、個々の業者さんでも返品削減に取り組む動きは見られます。ある大手チェーンでは、15年度には5%だった返品率を22年度には1.3%まで減らしました。業界としても努力はしているのです」

デイリー新潮取材班

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