「ダイコク」“返品7.5億円”事件はなぜ起きたのか……ドラッグストア業界にはびこる「ゆるすぎる商慣習」

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 ドラッグストアチェーンの「ダイコク」が、納入業者に不当な返品を求めていた問題で改善計画を発表し、先月、公正取引委員会の認定を受けた。コロナ禍でインバウンド客が減ったことを理由に、売れ残った医薬品や化粧品を納入業者に引き取らせていたという。“被害”業者はおよそ80社、額は7億5000万円にもおよぶ。

 仕入れるだけ仕入れ、売れなかったから返品……。ふつうのビジネス感覚では理解しがたい行為だが、じつはドラッグストア業界では、そう珍しいことではないという。

 さる化粧品メーカーの関係者が「業者別の返品率データ」を提供してくれた。そこには誰もが知るドラッグストアチェーンやGMS(総合スーパー)、バラエティストアおよそ20社の名前が並んでおり、全体の返品率は平均して3%ほどとなっている。だが業態別にみるとGMSは2%、バラエティストアは1%ほどだが、ドラッグストアはチェーンによって10%に及ぶ社もあり、全体の返品率を押し上げていることがわかる。数ある小売業態のなかでも、ドラッグストア業界だけ返品が“許されている”のだ。

「うちは化粧品で回転率が低く在庫があまりがちなので、回転率の高い洗剤やヘアケア商品より返品率が高いというのはあります。それでもGMSやバラエティストアにくらべるとドラッグストアさんの返品率が突出して高いのは間違いない。これはうちに限った話ではなく、どこのメーカーもそうですよ。返品契約など当然結んでいません。『そういうもの』として、ドラッグストアだけ返品が許されているのです」

 こうした返品事情は、まわりまわって商品価格の上昇につながるというのだから、われわれ消費者としても看過できない。

「返品された商品を再生することはあるのですが、かかるコストは低くありません。戻ってきた商品を仕分けする人手や、破損している箱の別途調達などが必要になってきます。そうしたコストのぶんは、当然、値段設定に影響します。もっともコストを考えると、返品されたもののうち再生できるのはせいぜい10%ほど。残りは破棄です。寄付したりセール販売したりすることもできなくはないですが、ブランドイメージの低下を考えるとなかなかやりにくいのです」

 返品問題については、業界団体「日本チェーンドラッグストア協会」も2016年の会見で、池野隆光氏(ウエルシアホールディングス代表取締役兼会長)が言及している。「押し込むだけ押し込んで返品する、あるいは廃棄するという余裕はないはずだ。返品問題にはこれまでもずっと取り組んできたが、うまくいかなかったのは、やり方に問題があったのではないか」(薬事日報)。ダイコク問題がおきるはるか以前から、認識されていた問題であることがわかる。

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