阪神はなぜ生え抜きの“叩き上げ”が育たないのか…高卒野手は「掛布雅之」以降、誰一人伸びない“厳しい現実”

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“育成下手”のレッテルを剥がせるか

 2022年と1軍、2軍が同試合数と仮定しても、ソフトバンクの2023年は、前述の計算式に当てはめると、1選手あたりの試合数が「47.9」に跳ね上がる。ソフトバンクは福岡・筑後市に育成に特化した2球場、室内練習場も備えた一大施設を整備している。育成選手を増やすためには、環境の充実も伴わなければならないという一つの証左でもある。

 2023年の阪神は、支配下68、育成5の計73選手でスタートした。総人数でいえば、2022年より1人減となる。

 このスケールであれば、現状の施設でも、ソフトバンクの1人あたりの実戦機会と遜色ない試合数を与えることもできる。

 1番・近本光司、4番・大山悠輔、5番・佐藤輝明のドラフト1位トリオに、西純矢(創志学園高)、浜地真澄(福岡大大濠高)、及川雅貴(横浜高)、才木浩人(須磨翔風高)ら、高卒の若手投手たちも台頭し始め、2023年の岡田阪神は序盤戦から上位に食い込んでいる。

 阪神は、自らの環境に応じた育成方針を、やっと見いだせてきた感がある。果たして、“育成下手”のレッテルを剥がすことができるだろうか。

【『1人あたり試合数』は阪神が12球団でトップ】
・阪神 試合数=43.6 総試合数269 (支配下66、育成8)
・オリックス試合数=43.0 総試合数294 (支配下65、育成17)
・西武 試合数=42.4 総試合数272 (支配下63、育成14)
・広 島 試合数41・9 総試合数262 (支配下66、育成9)
・ソフトバンク 試合数41.9 総試合数363 (支配下66、育成38)
・ヤクルト 試合数41.2 総試合数254 (支配下67、育成7)
・中日 試合数41.1 総試合数260 (支配下65、育成11)
・DeNA 試合数40.5 総試合数260 (支配下66、育成11)
・ロッテ 試合数40.4 総試合数256 (支配下65、育成11)
・巨人 試合数39.4 総試合数=332 (支配下60、育成41)
・日本ハム 試合数36.8 総試合数=242(支配下66、育成13)
・楽天 試合数36.7 総試合数=257 (支配下68、育成16)
(選手数の内訳は2022年2月10日時点)

※喜瀬雅則著『阪神タイガースはなんで優勝でけへんのや』(光文社新書)の第3章「戦略」から再構成しました。

喜瀬雅則(きせ・まさのり)
1967年、神戸市生まれ。スポーツライター。関西学院大卒。サンケイスポーツ~産経新聞で野球担当として阪神、近鉄、オリックス、中日、ソフトバンク、アマ野球の各担当を歴任。産経夕刊連載「独立リーグの現状 その明暗を探る」で2011年度ミズノスポーツライター賞優秀賞受賞。産経新聞社退社後の2017年8月からは、業務委託契約を結ぶ西日本新聞社を中心にプロ野球界の取材を続けている。著書に「牛を飼う球団」(小学館)、「不登校からメジャーへ」(光文社新書)、「ホークス3軍はなぜ成功したのか」(光文社新書)、「稼ぐ!プロ野球」(PHPビジネス新書)、「オリックスはなぜ優勝できたのか 苦闘と変革の25年」(光文社新書)、「阪神タイガースはなんで優勝でけへんのや?」(光文社新書)

デイリー新潮編集部

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