阪神はなぜ生え抜きの“叩き上げ”が育たないのか…高卒野手は「掛布雅之」以降、誰一人伸びない“厳しい現実”

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「誰一人、いないでしょ?」

 藪は、阪神からコーチ就任のオファーを受けると、メジャーや他球団での豊富な経験を踏まえ、最新のトレーニング法や練習に関し、パワーポイントで資料を作成した上で、球団首脳とのミーティングに臨み、プレゼンテーションを行ったという。

「阪神は監督が代わると、また『ご破算で、願いましては』となる。方針が途切れて転換しちゃうし、伝統が続かないんですよね。ウチのシステムに入れば、必ずこうなりますよというのは、セ・リーグならヤクルトであり、広島であり、DeNAであり、パ・リーグだとソフトバンクであり、西武ですよね。阪神にはないですよ。そういうのが出てこない」

 それだけに、藪の指摘は、驚愕の事実でもある。

「誰一人、いないでしょ?」

「高卒野手」が、ここ30年近く、阪神では伸びていないというのだ。

「掛布さんくらいでしょ? 後は、今岡(真訪・兵庫/東洋大/96年1位)も、岡田(彰布)さんも、鳥谷(敬・東京/早大/03年自由枠)も、みんな大学出。これだけの歴史があって、高卒のキャッチャーなんか、誰もいないでしょ? ゼロでしょ?」

掛布以降、高卒野手は“大台”に到達していない

 1980年から8年連続で掛布雅之が「開幕4番」を務めたが、その“掛布後”に、高卒の生え抜き選手で「開幕4番」を務めたのは、2000年の新庄剛志(福岡/西日本短大付高/89年5位)、2003年の浜中おさむ(和歌山/南部高/96年3位)だけ。

 その2人も、その後の「開幕4番」はなく、クリーンアップ定着もできていない。

 掛布以降の高卒野手で、阪神在籍中に通算500安打以上を放ったのは、807本の関本健太郎(奈良/天理高/96年2位)と505本の浜中、955本の新庄の3人だけ。

 1656本の掛布の後、高卒野手では1000本の“大台”に誰も到達していないのだ。

 田淵以降の主なレギュラー捕手を見ると、若菜嘉晴(福岡/柳川商/79年移籍)はクラウンライター(現・西武)から、木戸克彦(大阪/82年1位)は田淵と同じ法大出身、嶋田宗彦(和歌山/84年4位)も社会人の住友金属出身、山田勝彦(愛知/87年3位)は東邦高からの入団だが、2003年には日本ハムへ移籍している。

 2022年まで4年間、阪神監督を務めた矢野燿大(大阪/東北福祉大/98年移籍)は中日から、城島健司(長崎/別府大附属高=現・明豊高/10年移籍)はメジャーのマリナーズからの移籍で、梅野隆太郎(福岡・13年4位)も福岡大出身だ。

 育て切れないのか、育つまでに時間がかかって待てないからなのか。2015年からの3年間、ドラフトで高校生の野手を指名していない。

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