妻から「いいわよ知ってるから」と言われ…その瞬間、40歳夫が「不倫を続けているのがバカみたいだと思った」理由

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過去にケリをつけよう

 その一方で、彼は自分自身も救われたいと思っていた。茉利さんと一緒に暮らすことで、自分自身が克服しきれない弱さや、自分の本当の欲求に目覚めたらしい。

「妻の気持ちのねじれを見れば見るほど、もっと素直に生きてもいいんだなと思うようになった。そのためには前の会社の部長の一件について、自分なりにケリをつけようと決めました」

 茉利さんにそれとなく部長のことを聞くと、自宅は前の奥さんに明け渡したそうだ。妻の留守に年賀状を漁ってみた。きちんと取ってあったため、かつての年賀状を発見、住所もわかった。

「とりあえず行ってみました。彼女に会いたいわけではなく、どういう生活をしているのかだけ知りたかったんです。何度目かに行ったときは休日の夕方だったんですが、家の中から彼女が出てきた。ひとりで暮らしているのかと思ったら、その後に続けて出てきたのが、なんと部長だったんです。はあ? と思わず声が出ました。部長と元奥さんがどういう関係かはわかりませんが、少なくとも奥さんは笑っていたし、もめているようには見えなかった。子どもがいたはずなので、子どもに会いに来たのかもしれません。少なくとも奥さんもそれを歓迎しているんでしょう。もっと穿って考えれば、元夫婦のよりが戻っている可能性だってある。僕は何年も悩んで苦しんできたけど、もうその苦悩からは自分を解放してもいい。自分がしたことは消えないけど、奥さんは前に進んでいる。僕も前に進もう。そう思いました」

 それが結婚してから5年ほど経ったときのことだった。以来、勇弥さんは茉利さんと揉めないよう、穏やかに暮らしていくことだけを心がけた。仕事も順調で、だんだん重要な役割を任せられるようになっていった。

部下の女性の「告白」

 ところが好事魔多しとでもいうのだろうか。コロナ禍直前のことだった。部下の真智子さんから相談があると持ちかけられ、ふたりきりで会ってみると、「私、徳田さんが結婚したころ、奥さんから徳田さんの行動を報告するように言われていたんです」と告白された。

「彼女は『最近はやっていませんし、報告しろとも言われなくなりました。でもどうしても徳田さんに謝りたかったんです』と泣き出しました。報告者が彼女だったと初めて知りましたが、責める気持ちなんてまったくなかったから、気にしなくていいと言ったんです。かえって嫌な思いをさせて申し訳なかったと謝るしかありませんでした。僕自身、部長の一件が心に長く尾を引いていたこともあるから、『とにかくすべて忘れて、あなたはあなたの人生だけを考えて生きてほしい』と真剣に説得したんです。そのことに煩わされてはいけない。本当にそう思いました」

 それから、真智子さんとはときどき会うようになった。彼女の心の重石を軽くしたかったのもあったが、真智子さんと話すのが楽しかったのが本音だという。

「楽しい時間を過ごすとまた会いたくなる。そういうシンプルな思いに忠実に生きようと思いました」

 真智子さんも「私は前から徳田さんが好きだったんです」と言ってくれた。自分では冷静なつもりでいたが、おそらく心が浮かれまくっていたと思うと彼は照れた。

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